来年岡山会に「業務報酬」について、講師で伺います。
報酬についての研修はとても難しいですね。
新しい法律や制度の講師なら皆新鮮に聞いてくれます。実際知識を伝えれば研修会として成立するので、講師としても楽でした。
報酬のように、誰でも知っていて一家言持っている分野の講師は、とにかくやり難いのです。答えるのに難しい質問も多いです。
講義では最初にその方の考え方のフレームを揺らさなければなりません。
ですから研修タイトルは「(仮)土地家屋調査士と業務報酬を今一度考える」と考えています。
土地家屋調査士によっては「報酬については何も迷っていない。私のお客様は納得している」とおっしゃるでしょう。確かにそうでなければなりません。迷いながらお客様と接しているなら、大変失礼なことだからです。でも本当に迷っていないのでしょうか。
報酬とは、土地家屋調査士にとって、生きる糧です。
報酬とは、お客様にとって、土地家屋調査士が提供したサービスの対価です。
その中で、土地家屋調査士にとってもお客様にとっても納得できる報酬を考えなければなりません。納得とは、絶対金額でお互いに折り合える報酬額に決まるということだけではありません。他のモノの値段を考えれば、別の意味があることが、明白であると思います。
また重要な論点ですが、報酬を決めるのに土地家屋調査士とお客様以外の第三者が大きな関与をしていないか、ということです。ここも整理して考える必要があります。
土地家屋調査士だけではなく、あらゆる資格者は長年「先生」と言われ、報酬で悩んだことがほとんどありませんでした。ですから他の業界のように、本来のものの値段を学ぶ経験がほとんどありませんでした。
岡山で戴いた時間内でお伝えできることは、これらの考え方のほんの基本だけになりますので、事前に以下の文章をお送り致しました。ちょっとでも疑問を持ってから研修会を聞いて戴きたいと思います。
岡山会の皆さんへのメッセージ
3月11日の東日本大震災に際しては、岡山の皆様には大きなご支援を戴きました。お陰様で宮城は少しずつ復興しております。心から感謝申し上げます。
さて、今回は岡山会の研修会に講師としてお招きいただきました。
テーマは「事務所経営と業務報酬」です。大震災のお礼を兼ねて喜んでお伺いします。
土地家屋調査士の業務報酬を考えることは、とても難しいですね。
全国統一の法務大臣認可報酬が廃止になってから、全国の皆さんが悩んでいます。では、土地家屋調査士の業務報酬はどのように考えれば良いのでしょうか。
土地家屋調査士の業務報酬は、まず土地家屋調査士の制度を理解して、その業務を理解して、その上で、はじめて報酬まで語れると思っています。報酬だけ単独で語っても意味が無いのです。社会における資格業の位置づけも理解した上で、報酬を語るべきです。そうでないと、説得力がありません。
報酬は事務所の維持に必要なものです。ただし、ある意味ではお客様と利益双反になるものでもあります。
そのバランスの中で、お客様も土地家屋調査士も納得できる報酬を計算しなければなりません。
お客様に提供しているサービスの本質はいったいどんな価値なのでしょうか。
もちろんベースには原価計算が有るはずです。それが誰に対しても説得力を持ちます。難しいでしょうか。そんなことは無いと思います。
考えてみましょう。資格業の報酬以外、モノの値段はお客様も売り手も納得できる価格で、普通に成り立っているからです。肉でも野菜でも、洋服でも、あらゆる他のものの値段は、もともと自由に決めるものですね。
その上で、高いお店も安いお店も成り立っていますね。
私たちはこの訓練ができていないだけです。
例えば以下の設問を一緒に、そして「合理的に」考えてみましょう。
「合理的」とは土地家屋調査士にとってもお客様にとっても「合理的」でなければなりません。
お伺いすることを楽しみにしております。
考えてみたい設問
イ)
報酬の自由化で、いくら高く請求しても良くなったのですか?
ロ)
報酬の自由化でいくら安くしても良いのでしょう。それなのにダンピングって有るのですか?
ハ)
平成15年以前の報酬額表を、今も使って良いのですか?
ニ)
お客様に報酬額が高いと言われましたが、どうしましょうか?
ホ)
新人は安くしないと仕事が来ないので、最初だけ安くしても良いですか?
ヘ)
見積りを作ったことがないのですが、必要でしょうか?
ト)
報酬額はいちいち細かく説明しなければならないのですか?「一式いくら」の方がお互いに分かりやすいのではないですか?
チ)
お客様によって報酬額を変えても良いですか?
リ)
報酬に冬期特別加算や特急特別加算を考えても良いですか?
ヌ)
筆界特定申請代理業務はどのように報酬計算すればよいでしょうか?
ル)
ADR代理は始めてみないと分からないのに、見積りはどうすれば良いですか?
ヲ)
電話での見積りの質問については、どう対応すれば良いですか?
ワ)
杭打ちだけの依頼については、どう対応すれば良いですか?
カ)
昔自分が調査測量した土地を再度依頼が来たときは、立会省略で良いですか?
ヨ)
値引きについては、どう考えれば良いですか?
タ)
受託契約書は皆さん作っているのですか?
レ)
着手金や中間金は、戴いても良いのですか?
ソ)
境界協議不成立の際には報酬をどう考えれば良いですか?
ツ)
業務経過報告についてどう考えれば良いでしょうか?
ネ)
請求について注意することは何ですか?
ナ) 登記完了の際はどこまで納品しますか?