2014年12月8日月曜日

新しい生物学の教科書

以前も書きましたが、私は理学部生物学科卒業です。

それなりの卒業研究をしてそれなりの研究発表もしました。
大学院に進み研究を続けるか、大学院後企業の研究職に就くか、理科の教員になるかが、生物学科卒業の一般的な道です。

当時は生物学と言うよりも哲学的に生命そのものを見たかったということが正直な気持ちでした。
「何故人間は生きるのか」
「人間とは何か」
「生きるとは何か」
それを見たくて生物学科に入り、単細胞生物を見たり、遺伝子を見たりしていました。
あのまま続けていたら、STAP細胞で世間の注目を引くのは私だったかも知れません。

さて、
「それじゃあ、鈴木は何故土地家屋調査士をしているの?」
よく聞かれます。
わかりません。そこは私も聞きたいです。

卒業後、私は生物からすっかり足を洗ったようですが、たまに生物がらみの専門書を読んでいました。
ここ数十年の生物分野の研究の動きはとても面白いもので、詳細まで追い付けはしなくても、大きな流れだけでも掴んでおきたいと思っておりました。
たまに書店歩きをする際には生物学関係の本もよく見ていました。

さてそれらの中にも分野毎に面白そうな本はあるのですが、現代の生物学を一覧できるものはあまり見当たらなくて、皆さんに紹介できそうな本はあまり無いなと思っていました。
そんな中で見つけたのがこの本です。


「新しい生物学の教科書」池田清彦著 新潮文庫

背表紙の紹介です。
「高校の生物教科書に失望した著者は、もっと面白い生物の教科書を作ろうと思い立つ。そして生命の起源、生物の多様性、免疫とアレルギー、脳と心の問題、がん細胞と遺伝子の関係など、日常生活に関わるテーマも盛り込み、生物学特有の概念や用語を分かりやすく解説した。最新の研究成果も随所で紹介し、各章には便利なサマリー付き。知的刺激に富んだ、現代人のための新テキスト!」

あくまでも生物の教科書と言っているので、内容は多岐に渡っています。
でもこれ一つで教科書にはなりません。
また、誰でも読める本かと言うと、なんらかの基礎知識がある人が読まないと理解できない部分も有ると思います。
まったく興味の無い人が寝転んで読む本では無いと思います。

高校で生物の授業を受けて興味を持った人。
ブルーバックスなどが大好きな人。
最近のニュースで生物学関係の単語が気になる人。
そんな辺りがターゲットかも知れません。

教科書と思わずに興味のある章だけ読むと決めれば、結構楽しめると思います。

第1章 種とはなにか
第2章 遺伝と変異
第3章 減数分裂
第4章 性の決定
第5章 進化のしくみ
第6章 生命の起源と初期の進化
第7章 進化パターンと大絶滅
第8章 生物多様性
第9章 相同とは何か
第10章 免疫とは何か
第11章 免疫系とエイズ、アレルギー
第12章 個体発生と系統発生
第13章 代謝と循環
第14章 脳と心
第15章 種間競争とニッチ
第16章 人類の起源
第17章 現代人への道
第18章 がんの生物学
第19章 生態系
第20章 遺伝子
第21章 形態形成
第22章 寿命と進化
第23章 中学校理科教科書を読む
第24章 小学校理科教科書を読む

ね、読んでみたい章もあるでしょ。
一つ一つの章が十数ページですから、分からなくて読んでも我慢できる範囲ですよ。

私には、具体的な高校の生物教科書の記載を引用しそれに(若干ネガティブな)コメントを付けているところが、新鮮でした。
結局「教科書に失望した」から始まった執筆動機からみても、この教科書評論が一番言いたかった頃でしょうし、面白い箇所でもありました。