2023年9月24日日曜日

22年前に合格してこれから開業したいIさん

Iさんからの相談です。

ご本人の了解を得て一部を使わせてもらっています。 


以下要約

「20年以上前になりますが土地家屋調査士を志しました。土地家屋調査士事務所の補助者募集に応募したこともあったのですが、当時、試験にも受かっていない状況での転職に事務所の先生に諭していただき思いとどまった経緯がございます。

その後、平成13年に土地家屋調査士試験に合格しました。

試験合格後、土地家屋調査士への道について、家族で話しもしましたが、最終的には進みませんでした。

平成17年に勤務していた会社が、子会社を設立することになり、その設立の仕事で家族移住いたしました。

田舎暮らしをしたいという思いがあり、田舎での仕事探しの武器になればという思いで資格取得を目指したことも要素としてありました。

地方転勤の話が、夢を叶えるものであると考え、在籍出向として田舎で約18年間仕事を続けてまいりました。

友人知人との交流を続け、昨年頃からこの田舎で永住したいという思いが強くなりました。

それと同時に、土地家屋調査士へもう一度挑戦をしたい思いも強く抱くことになりました。

補助者募集の少ない田舎で経験を積むのは難しく、開業して公嘱協会に入会させていただき、諸先輩先生と公的な仕事を通じて経験を積み、民間の仕事の営業を行っていく考えに至っています。」


Iさんは私のブログの読者とのことでした。

 Iさんからの上記の相談内容には、実はIさんが抱える個人的な事情等から見えてくる論点がいくつかあり、それらについては電話で直接説明をいたしました。

このブログでは、今回の相談内容に対する考え方を、ここで書くことができる範囲で、皆さんのお役にたてるようなコメントでまとめさせていただきます。


1.土地家屋調査士はどこで開業しても良いのです。そういう意味ではIさんが気に入っている今の場所で開業ができます。ただし、その場所が田舎であるので補助者募集も少ないということは、業務自体も少ないのかもしれません。そこを認識した上でのマーケティングを考えて、今の土地で生きていくためには、さらにどんな知識や技術が自分に必要かを考えてみてください。


2.たとえ直近の昨年の合格者であっても、その後の先例や通達は読んでいなければ使えません。ましてや平成13年の合格であればなおのこと、勉強を継続していなければ(途中に大きな改正もありましたし)、何の能力も残っていないという現状かと思われます。

 実際に補助者になっても、基本的な法律を解説してくれる事務所はほとんど無いでしょう。補助者募集を待っている場合ではなく、土地家屋調査士を目指すのなら、今日から勉強してください。早急に力を付けてください。


3.補助者で修行するのには、必ずしも地元にこだわる必要はないかもしれません。就職ではないのでしょう。だったら本当に学べるところで、本気で努力して、できるだけ補助者修業期間を短期で終わらせられるところを探すというのも選択肢の一つです。

その時期に大切なのは、「上質な知識を、効率よく、短期間で」でしょう。

そこでは、収入や通勤時間は二の次だと思います。本当に力を付けたら、給料の差額などはすぐに取り戻せると思います。


4.公嘱協会(公共嘱託登記土地家屋調査士協会)でどれだけの経験が積めるのか、そもそもどれだけの業務を担当させてもらえるのか、それによりどれだけの知識が得られるのか、これらは各地の公嘱協会により事情がかなり違います。具体的には地元の先輩に確認した方が良いでしょう。

それにしても、公嘱協会に入会すれば仕事ができるようになると思うのなら、想像力が無さ過ぎます。公嘱協会が担当するのは公共嘱託の業務であり、それは土地家屋調査士の業務範囲全体から見た場合の一業務という位置づけになることを頭に入れてください。それ以外の土地家屋調査士業務の能力は、結局自分で身に付けなければなりません。


 「どこかに所属すれば教えてもらえる」

そんな考え方だけでは、補助者になっても、公嘱協会に入会しても、広範な実力は付かず、結局鳴かず飛ばすになってしまいます。

 様々な業務を具体的に想定して勉強を始めてください。始めれば疑問がたくさん出てくるはずです。それらの疑問を公嘱協会や補助者として勤めた事務所などの先輩たちに質問して解決していき、ひとつひとつ身につけていくのです。

 教わるのを待っているという考えや態度では、成長は望めません。

 「言われなくても今日も勉強をする」覚悟を持ってください。

それらができないのなら、今の会社にいた方が良いと思います。

 逆にそれが分かった上で、今日から努力すると決心したのなら、私も全力で応援します。