2015年9月3日木曜日

最強のふたり

冒頭の車のシーンから引き込まれました。

この映画おそらくこんな感じのストーリーなんだろうなって思っていたんですが、想像とまったく違うシーンから始まりました。

緊迫感の中で疾走する車、不穏な気持ちになるピアノ音楽。
パトカーが追ってくる。
この二人はどこへ向かっているのか。

映画の構成や音楽が上手いんでしょうね。


 ひとりは、スラム街出身で無職の黒人青年ドリス。もうひとりは、パリの邸に住む大富豪フィリップ。何もかもが正反対のふたりが、事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──だが、ふたりとも偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。
(公式HPより)


映画館に行く時間がないので、今回も古い(2年前)映画です。

生い立ちも、教養も、品性も、まったくこの対照的な二人の話し。
しかし実は似た部分もある二人。


このポスターと上記説明だけで、話の展開が想像が付くでしょう。
そうです。
おそらく、そのとおりです。
想像も付かない、もの凄いドラマが展開するわけではないのです。
おそらく皆さんの想像の範囲でしょう。

でも、この映画なかなか上手いのです。
我々観客の心のつかみ方が。
そして特筆すべきはフィリップとドリスの演技力です。

この話は、フィリップが書いたという手記が下敷きになっているとのことですが、映画では設定を大幅に変えているようです。

映画では、フィリップとドリスの関係に焦点を当て、身障者と介護者という側面を最小限で表現しています。
ドリスは、身障者であるフィリップにまったく同情などせずに、ずけずけと頭に浮かんだとおりデリカシーの無い言葉を言います。

フィリップは大富豪であり、身障者です。
だから誰も気を遣ってしか接しません。
でも、ドリスにはどちらも関係ないのです。

だからこそフィリップにとって、頸椎損傷後(健全な)人間として本音で向き合った初めての他人と感じたのかも知れません。
身障者に異常なほど気を遣うことは逆に差別に繋がるからです。


様々なエピソードを通して、二人がどんどんお互いの理解を深めていきます。
おそらく実際の二人にはもっともっと対立した時期もあったでしょうが、この映画ではお互いを意外とあっさり受け容れていきます。
もう少し受け容れるのをためらうシーンがあっても良いと思うのですが。
映画の時間の関係かな。
まあ良いか。

最初ドリスとフィリップの関係がどうなるのか興味深く見ていたのが、段々ニヤニヤになって、最後にはこの二人をずっと見ていたい気になりました。
だから良いんでしょうね。

介護の最前線にいる人が見たら「介護とはこんなもんじゃない」とか「身障者と介護者はこんな訳にはいかない」とか、おっしゃるかも知れません。
私はそこは分かりません。

でもこれは映画です。たとえ現実のモデルがあったとしても、これは物語です。
そこをリアルに描き出す映画もあるでしょう。
でも私は、どんな映画も皆リアルでなければならないとは思っていません。
映画は大なり小なりファンタジーです。

そんなに構えないで、皆に観て欲しい映画です。
この映画は、私の好きな映画に入りました。