2012年11月26日月曜日

矜持

先日、他の会の土地家屋調査士の方とお話をしました。

その人は、お客様の為に余計な手間を省いているとのことでした。
つまりお客様に言われたことだけを処理するために、法律や手続きに定めてあることまで屁理屈をつけて省略し、お客様の費用負担を避けようという趣旨らしいのです。

境界確認するときにできるだけ面倒な隣接者と立ち会わない方法を考えるようです。たとえば、売買の為に境界確認を依頼されたときに、その隣接者を避けて1m程度引っ込んで分筆をするそうです。面倒な隣接者と関わって数ヶ月過ぎるよりもお客様の為だとのこと。
そして分筆の際の全筆測量の原則を外す為の何とか言い訳したり、世界座標で測量しなければならないところを、近傍に三角点等がないと言い切って任意座標で測量したりするそうです。

その残された細い土地はどうするのでしょうか。問題を先送りどころか、売買にしても管理にしても、新たな問題を作った事になります。

それらが本当にお客様の為でしょうか。
土地家屋調査士本人がやりたくないから、または能力が無いから、お客様のせいにしているのではないでしょうか。自分だけの為でしょう。
なぜ法律は世界座標を要求するのか考えましょう。なぜ法律は分筆の際に全筆測量を要求するのか考えましょう。
また法律には無いけれど、なぜ土地境界を確認する際に隣接者の立会を必須とするのかも考えましょう。
それは地権者であるお客様の土地の取引や管理の安全を図るためです。
土地家屋調査士の目先の安易な売り上げのためではありません。

たとえば医者が、頭痛の患者に痛み止め薬だけ渡して精密検査をしないことを、お客様のために費用を軽減していると言うでしょうか。
まして土地家屋調査士の場合は、その精密検査が法律で義務づけられているのです。
土地家屋調査士の存在目的を再確認すべきです。

私たちのような資格者を士業(さむらいぎょう)と言います。
私たちが侍なら武士道を貫くべきです。