2012年11月1日木曜日

奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」

阪神淡路大震災の年が、ボランティア元年と言われることがあります。
大勢の若者を中心に日本中から大勢集まり、世間にそのボランティアという存在を知らしめた年でもあります。
甚大な被害の大震災を背景に「ヒューマニズム」だけがクローズアップされた存在ですが、この「善意による」「無報酬の」「社会貢献」は、とても曖昧なもので、「自発的」だからこそ組織行動が難しく、飲酒して騒ぐ迷惑なボランティアという新たな問題も起こったのです。阪神淡路大震災において、災害ボランティア活動はきれい事だけでは済まないことを、全国の人は、知ってしまいました。
今回の東日本大震災でも、被災地では全国から集まるボランティア志願者について不安視する向きも有ったようですし、被災地の各自治体もボランティア受け入れには実際消極的だったようです。

奇跡の災害ボランティア『石巻モデル」中原一歩 朝日新書



この本を読みました。
被災後半年間だけで、石巻に集まったおよそ100団体、のべ68万6800万人が混乱無く組織され、ボランティア活動の奇跡的成功例を紹介しています。

全国から集まったボランティアは組織されている訳ではありません。被災地に来て始めて組織されるのです。そのボランティアの個人、グループにしても、思想信条、またやれることが皆違うので、組織化することはとても難しいのです。
また大勢の人が集まるだけで、その人達の生活が新たな問題になるのです。食事とトイレ、生活規範など様々な二次的な問題が発生します。

石巻だけで震災後6ヶ月間でのべ10万人のボランティアが来ています。その石巻で、社会福祉協議会、ボランティア、地元企業、支援企業、自衛隊までが奇跡的に連携できたのです。そしてそれには受け皿としての石巻専修大学が拠点となったことがとても大きいできごとでした。大学のキャンパスの一角にテント村ができました。

石巻専修大学の一室で毎夜繰り返される「石巻災害復興支援協議会」が奇跡的な連携活動の中心となりました。

筆者中原一歩氏は、佐賀県のノンフィクションライターですが、石巻に腰を下ろし丁寧に取材しています。様々な出来事とその決定過程がよく書けていると思います。

NPO、NGO、ボランティア個人、行政、地元のキーマン、あらゆる立場の人の視線で、とても具体的に書かれています。

起きては欲しくないけれど、今後も何か起きる可能性が有ります。その観点では日本列島安全なところは無いと言えます。

だからこそ、この本の提言はとても重要だと思います。
すべての方に是非読んで欲しいと思います。