2017年2月6日月曜日

マグニフィセント・セブン




黒澤明監督の映画「七人の侍」を西部劇にリメイクした映画が「荒野の七人」です。
どちらも傑作です。
そして今年また、このリメイク映画ができました。
「マグニフィセント・セブン」です。

リメイク3作目を創る意味があるのでしょうか。
(もちろん、宇宙版もあったけれど私は数に入れませんし、「続・荒野の七人」から始まる3作も「七人の侍」のリメイクの路線ではないのでこれも数えません)
何作目であっても、この「七人(セブン)」を名乗った時点で、過去の名作と必ず比べられる試練が待っているのです。余程の名作でない限り、必ず叩かれる運命の映画です。

かなり不安になりながらも、やはり「荒野の七人」のリメイクなら観たいという気持ちと、私の好きなデンゼル・ワシントンが出るということもあるので、とりあえず観ることにしました。

結論、観て良かったです。
久しぶりに正統派の西部劇を観ました。
お約束の銃撃戦もかなり迫力のあるものでした。
七人も魅力的で、面白いものでした。
映画としては、観ても損はしません。

ただし...(やはり...)
この映画は「七人の侍」のリメイクですよね。
そう考えてしまうと若干弱いですね。
「七人の侍」では、あの激しい戦闘シーンの中にもしっかりと人間を描いていました。
「荒野の七人」も、そこは描いていたと思うのです。

今回の7人は、とても今日的なチームでした。
つまり、黒人、白人、アジア人、メキシコ人、ネイティブ・アメリカンの混成の7人です。(もしかするとあの二人は同性愛者かも知れませんし)
そして、助っ人探しに来るのが女性で、しかも直接銃を持って戦う女性です。
これは新大統領に見せてやりたいポリティカル・コネクトネスの世界です。

しかし、この一癖も二癖もある7人が、何故この戦いに入り込んだのか、そこがあまり描かれていません。何か参加の仕方が唐突なのです。リーダーのチザム(デンゼル・ワシントン)だけは強い動機があったことが後で分かるけれど。その理由に皆を巻き込んだだけなら、映画としてまずいでしょう。
単純な金のためでも、正義のためでも何でも良いから、もう少し各々の動機付けを見せて欲しいのです。そこの描き方が少なかったと思います。そうでないとあそこまで命をかける状況の説得力が無いのです。

「荒野の七人」のハリー(ブラッド・デクスター)が死ぬ直前に、クリス(ユル・ブリンナー)が「実はこの村には大金が隠されていて....」と説明し、ハリーが命をかけた意味に満足して逝かせてあげるシーンが印象的でした。
ああいう何かが欲しかったと思います。

「七人の侍」は207分、「マグニフィセント・セブン」は133分だから、どうしても掘り下げる時間が無い、もしくは、編集時にカットされた、そんな意見も有るでしょう。でも「荒野の七人」は128分です。やはり工夫次第だと思うのです。
おそらく監督はそこ以外にこだわりたかったのでしょう。
でも、私はこの種のチーム戦の物語は、仲間を集めるところがとても面白いと思うのですけどね。

「七人の侍」「荒野の七人」の魂を引き継ぐのなら、外見的な多様性よりも、心の多様性にも丁寧に触れて欲しかったです。
今回のクリス・ブラットやイーサン・ホークも良かったけれど、思い出すと「荒野の七人」のマックイーンもブロンソンもコバーンも皆良かったなぁ。豪華だったなぁ。また観よう。

ここまで書いているのは「マグニフィセント・セブン」が傑作にチャレンジしたからで、どうしても比較したくなっただけです。
この映画は本当に面白いんですよ。
かなり人は死ぬけれど、残酷シーンでもないし、誰にでもお勧めの娯楽映画です。


ここまで書きながら「七人の侍」も思い出しています。
菊千代(三船敏郎)の名台詞がありました。
人間と社会を深く掘り下げながら、とてつもなく面白い娯楽作品として成立させています。
やはり、何度もリメイクのベースになって、世界の数々の作品からオマージュを捧げられた「七人の侍」は凄い映画でした。


やい!お前たち!一体百姓を何だと思ってたんだ?仏様だとでも思ってたか?ん?
笑わせちゃいけねえや!百姓くらい悪ずれした生き物はねえんだぜ!
米出せっちゃ、無え!麦出せっちゃ、無え!何もかも無えっつんだ!ふん!
ところがあるんだ。何だってあるんだ。
床下ひっぺがして掘ってみな!そこになかったら納屋の隅だ!
出てくる出てくる・・・瓶に入った米!塩!豆!酒!
山と山の間に行ってみろ!そこには隠し田だ!
正直ヅラしてペコペコ頭下げて嘘をつく!何でもごまかす!
どっかに戦でもありゃあすぐ竹槍つくって落ち武者狩りだ!
よく聞きな!百姓ってのはな、けちんぼで、ずるくて、泣き虫で、意地悪で、間抜けで、人殺しだ!ちきしょう!おかしくって涙が出らあ!
だがな、そんな「けだもの」をつくったの、一体誰だ?
お前たちだよ!侍だってんだよ!馬鹿野郎!
戦の度に村を焼く!田畑踏ん潰す!食い物は取り上げる!人夫人にコキ使う!女は犯す!手向かや殺す!
一体百姓はどうすりゃあいいんだ!百姓はどうすりゃあいいんだ、百姓は・・・
ちきしょう・・・・ちきしょう・・・!