2022年4月30日土曜日

専門家は「先輩に聞きました」では通用しない

 ここ20年くらい後輩に教える機会が多いです。

後輩たちは今までも他の先輩に質問してきたのでしょうが、目先の案件解決の答えだけを求めて、その答えの裏の本質的な理論まで身につけてきていないように思えます。

先日地元の若い会員たちの勉強会に出席しました。図面の描き方について座談会を開催していました。

そのなかでの質疑で「図面の中のその部分は、何故そのような描き方をするのか?」という問いに対して、「私の勉強していた事務所ではこのように描いていたから」という答えがありました。本人は何も考えずに、典型的な様式をただ踏襲していたのでしょう。

私の事務所では、様式は一つではありません。案件の目的によって当然様式が変わります。詳細を説明するにはこのブログでは難しいですが、目的によって必要な要素も変わるからです。図面についてどこまで描くか、レイアウトも、線の太さも、文字のポイントもフォントも、毎回全部自分で考えてきました。


先日は、私の事務所に筆界の検討のしかたについて、後輩が相談に来ました。

筆界を検証する資料として、公図の分析評価について私が意見を述べたら「以前他の先輩からはこう聞いた」と言って反論をされました。

私が自分の時間を割いて質問に答えているのに、他の先輩の話をされても困ります。それを言うならその先輩のところに質問に行ってください。

議論は歓迎ですが、その根拠が「先輩から聞いた」では話になりません。先輩から教えてもらってから、その周辺についてさらに勉強を重ねて、自分の意見にしていなければなりません。

専門家なら「私はこう考える」と言うべきです。実際にその仕事で訴えられたときに、先輩が一緒に被告台に立ってくれるわけではありませんから。


さて、公図の評価については、作成された年代や、その目的や、作成方法や作成者によっても分析や評価が異なります。「公図はこうだ」という唯一の評価はできません。

おそらく以前その先輩に質問した案件においては「先輩から聞いた考え方」で正しかったのでしょう。でも別の案件では、公図と他の書証や現地の物証との整合により評価の優劣も変わることもあるはずです。やはり質問しただけで自分のものにしていないと、判断に誤りが出てしまいます。


私は質問を受けたら、答えだけ教えることはしません。特に土地の筆界を判断するのは案件次第のところがあります。書証と物証と人証は、それぞれの評価も難しいし、それによって常に相対的な優先順も変わります。

私は「鈴木が言った」ではなく「私はこう考えた」と言えるまで、質問された以外のことまで教えてきたつもりですし、今後もそうするつもりです。

面倒でも最後まで君たちが理解できるまで時間を取るつもりです。

目先の一つの仕事を終えるための質疑応答ではなく、今後受託するであろうすべての案件に対応できる土地家屋調査士になるために、教えるつもりです。

頑張ってついてきてください。

とことん応援します。