2014年8月22日金曜日

限界集落株式会社



「限界集落株式会社」黒野伸一 小学館文庫

結構売れた本です。
本の存在は知っていましたが、私は文庫になってから読みました。

主人公多岐川優は一流大学からエリート街道を歩んできた男。六本木の高級マンションに住み、BMW7に乗っている。その優が起業のために会社を辞めて、起業前のひとときの休息に祖父の生きてきた故郷を訪れた。
優が訪れた故郷は絵に書いたような限界集落、その名も「止村」。
一晩だけの滞在かもしれなかったこの村を再生するために優は立ち上がる。
限界集落、過疎、高齢化、食糧自給率、米作、農協、地方自治体、減農薬、有機農業、集落営農、ブランド化、雇用問題等々、様々な現代日本の社会問題を捉えて、抵抗勢力と戦いながら優は一つ一つ解決していく。

重いテーマを扱いながらも軽く読めて面白い小説です。
故郷再生の物語ですが、都会からドロップアウトした人間達の再生の物語にもなっています。脱都会、田舎賛歌になり過ぎずにそのさじ加減も丁度良いと思います。

上記の現代日本の社会問題を解決するヒントはたくさん書かれていますが、即マニュアル本になる訳ではありません。
あくまでも小説であり、その物語はご都合主義的展開も見えます。
あまりにも上手く事が進みます。
しかし、長編大河小説にする内容でも無いので、この程度の展開でないと終わらなくなるので、ここは気にしすぎず楽しむべき小説でしょうね。

これが映画化やドラマ化されたらこのご都合主義は目立たないかも知れないし、先日の「WOOD JOB」の林業のように、農業や町興しを再確認できる良い映画になる可能性が有ると思いました。

何か勇気が湧く本です。
様々な事柄にチャレンジしたくなる本です。

前岩手県知事の増田寛也氏の「地方消滅―東京一極集中が招く人口急減―」が話題になっているようですが、確かに地方都市すら消滅するおそれがある時代です。
故郷を見直すために、一度読んでみても良い本だと思います。