2026年8月24日月曜日

地方での差別化について— 先輩を敵にしないという選択

先日の福岡のガイダンスでも、「大ベテランの現役の先輩が多く、地域とのつながりも強い。そんな中でどうやって差別化を図り、顧客を増やしていけばいいのか」という切実な質問をいただきました。

地方で開業を志す、あるいは開業したばかりの若手土地家屋調査士にとって、避けて通れない大きな壁があります。それは、地域に深く根を下ろしている大ベテラン調査士たちの存在です。私自身、開業当時はまったく同じ不安を抱えていたので、この「大ベテランの壁」がどれほど高く見えるかは痛いほど理解できます。


しかし、ここで視点を少し変えてみてください。

なぜ彼らは七十歳を過ぎても現役を続け、仕事が途切れないのでしょうか。理由はシンプルで、そこに確かな需要があり、そして地域との強い信頼関係があるからです。では、その強固なつながりは一朝一夕でできたものかといえば、もちろん違います。先輩方は長年にわたり地域の人々の役に立ち、様々な手続きや的確なアドバイスを積み重ねることで、信頼という名の絆を築いてこられたのです。

この「先輩たちの強み」を正しく理解することこそが、新人が差別化を考えるうえでの第一歩になります。


多くの新人が陥りがちな誤りは、先輩たちと同じ土俵で戦おうとすることです。登記手続きや測量業務という、誰もが提供できるコアな技術だけで勝負しようとすれば、実績と信頼を積み重ねてきたベテランに勝てるはずがありません。かといって価格を下げて安売りに走れば、自分の経営が立ち行かなくなるだけです。

私たちが考えるべき差別化とは、業務そのものの優劣ではなく、「お客様に提供できる新しい価値」の中にあります。

どれほどパワフルな大ベテランであっても、年齢を重ねれば体力的な衰えは避けられません。真夏の厳しい現場作業がきつくなるのは自然なことですし、それ以上に、目まぐるしく変わる新しい法律や制度、複雑化する最新の手続き、そして技術革新をゼロから学び直すことは、年齢を重ねるほど負担になります。まさにここに、若手が入るべき隙間、つまり大きなチャンスが隠されています。

時代は常に動いており、新しい法律や制度が導入されるたびに、不動産を取り巻く環境にはこれまでにない課題やニーズが生まれます。さすがのベテラン勢も、これらすべてに完璧に対応できるわけではありません。かつて先輩たちが若かった頃、時代に合わせて新しい技術や手続きを導入し地域を支えてきたように、今度は皆さんがそれを形にする番です。最新の法律知識や新しい技術、フットワークの軽さを活かした解決策をもって、現代の課題に向き合うのです。

差別化の本質とは、自分を大きく見せることではなく、「お客様にとって何が価値になるか」を徹底的に考え抜くことにあります。ベテランの先輩たちがカバーしきれなくなった現代的な課題を、あなたの新しい力で解決していく。その姿勢を貫くことで、大ベテランが多い地域であっても、あなたにしか頼めない確固たるポジションが必ず生まれます。


そしてもう一つ、非常に大切な提案があります。

地域のベテランの先生を「商売敵」と捉えず、業界の先輩として尊重することです。むしろ、先輩方と協力関係を築くことで、あなたの成長は大きく加速します。たとえば、先輩に対して「境界標の逆打ちだけでもお手伝いさせていただけませんか」といった形で、負担の大きい作業や新しい技術が必要な部分をフォローする提案をしてみるのです。もちろん、決して上から目線ではなく、あくまで丁寧に、謙虚に。

そのように一緒に現場を歩くことができれば、先輩が長年蓄積してきたノウハウを直接教えてくれる機会も生まれますし、地域の中で自然な形で世代交代が進む可能性もあります。敵対するよりも協力する方が、地域の住民にとっても、業界全体にとっても、そしてあなた自身にとっても最良の選択だと思います。


地方での差別化は、孤独な戦いではありません。

先輩を敵にせず、時代の変化を味方につけ、あなた自身の新しい価値を丁寧に積み重ねていってください。

応援しています。