2013年11月17日日曜日

パイロット万年筆キャップレス

これだけには手を出さないようにしていた万年筆。それがパイロットのキャップレスです。
何故って、だって万年筆なのに便利だからです。


キャップレス 絣


万年筆は本来扱いづらいものです。
キャップを外しているとペン先のインクが固まり、メンテナンスが必要になります。
だから書き終えたら必ずすぐにキャップをします。
書くときはそのキャップを両手を使ってクルクルと外し、ペン軸のお尻に挿します。
キャップをペン尻に挿すことにより、持ったときのペンのバランスが良くなる設計のペンが多いからです。

典型的な万年筆 ペリカン・スーべレーン


書き始める前にこんなことをしなければならないのだから、立ったままメモをするには万年筆は不適です。
落ち着いて机の上の上質な紙に向かい、心をおちつけてキャップをクルクルと・・・。
それが大人の文具の流儀ですから。


キャップレスのペン先と軸のクリップ

それなのに、パイロットはワンノックでペン先が出てくる「キャップレス」シリーズを1963年から作っているのです。
このペンは、普通のノックの位置がボールペンなどと逆で、普通ペン先が出る方にノックボタンがあり、クリップの付いている端からペン先が出ます。
握ってみるとそのクリップが邪魔にならないだけでなく、握ったときの指のガイドになったように絶妙です。
ペン先がとても小さいので、万年筆の一番の魅力であるペン先のたわみが少ないだろうと思いましたが、ペン先だけでなくおそらくこのペンと一体のユニット自体のたわみも加わって独特の書き味になっています。悪くありません。
そしてとんでもないことに、キャップが無いのにシャッターによりインクが乾きません。

ペン先はF 18金

これなら立ったままのメモにも最適です。
パイロットキャップレスの長年の歴史により、完成度も高まっています。

だから私には微妙なんです。
万年筆は不便だから大人の文具なのです。
作法が必要だから大人の文具なのです。
だから私はキャップレスには手を出していなかったのです。

文具は理屈だけで使ってはいけないのです。
えっこの写真? いや、だから・・・