先日、私の事務所に、土地家屋調査士の新人が受託事件の相談に来ました。
この新人は、私にその事件を説明するのになかなか要領を得ないのです。そして、現地の写真を見せようと手持ちの資料のファイルの中を探していました。また説明だけでなく、資料を見せる順番もとても下手でした。
この新人はお客様に物事を説明する際にもこんなことをしているのだと思います。
お客様に資料を見せる場合、資料の良し悪しだけでなく、どの資料を先に見せるかでお客様の頭の中に意図していないイメージができてしまうことがあります。だから、お客様に心からわかって欲しいというつもりなら、出たとこ任せではなくて、提出する資料を厳選して、その資料の順番を熟慮することが大事です。当然に資料に番号をつけるなりして、説明の本番では順番どおりにスムーズに資料を出すことに工夫をすべきでしょう。
専門家といえどもサービス業です。
私は専門知識を素人のお客様に伝えるには、当然にこれくらいの努力をしています。
また、私が研修会講師を依頼された場合も同様に考えて準備します。
テーマを熟慮して、どんな資料をどんな順番で見せれば受講者のためになるかを一生懸命考えながら資料を作ります。そしてその資料に用いる言葉を何度も校正して、誤解のない言葉を選んで、スライドを調整します。
人に伝えるということはそういうことです。
この新人には、質問に答えてから、以下のようにお話ししました。
君もお客様に何かを伝えるつもりなら、それくらいの努力をしなさい。
事前準備に相当な時間を使いなさい。
お客様が持ちそうな疑問や反対意見を予想して、その回答の準備もしておきなさい。
だから事前の1人ディベートは必要だと思います。
説明でまごつけば、君の説明している内容の信憑性まで疑われますよ。
君の場合は、資料をスムーズに出す準備をして、どんな説明をするかを原稿を書いて、一度リハーサルするくらいのことはしても良いと思いますよ。
新人とはいえ、プロなのだから。