2015年6月14日日曜日

楽章間の拍手について〜ライプツィヒ弦楽四重奏団演奏会にて

東日本大震災以来、被災地のために現地に来て演奏をしようとする演奏家は、先日紹介したイヴリー・ギトリスなど、本当にたくさんいます。多くの演奏会が開催されました。ありがたいことです。

ライプツィヒ弦楽四重奏団も毎年被災地で復興支援音楽会を開催してくれています。
先週も仙台で演奏会が開かれました。



ライプツィヒ弦楽四重奏団は、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席奏者たちが結成した弦楽四重奏団であり、現在のメンバーは以下のとおりです。
シュテファン・アルツベルガー、ティルマン・ビュニング、イーヴォ・バウアー、マティアス・モースドルフです。今回は第一ヴァイオリンのシュテファン・アルツベルガーが来日できず、コンラド・ムックに変更になりましたが、さすがに素晴らしい演奏で、美しい響きでした。良い演奏会だったと思います。

この演奏会で、一曲目のモーツアルト17番「狩」の第一楽章直後に拍手が起こりました。そして第二、第三楽章の後にも拍手が起こりました。
次の楽章に入ろうとしている彼らはイライラしているようでした。チェロのモースドルフは、手を振って拍手を止めようとまでしました。

楽章間の拍手は演奏会ではよくある問題です。
そしてこの話題、書くと嫌われたり批判されたりしそうな話題です。
しかし、これからクラシック音楽を楽しむ後輩の為にもあえて書きます。

基本的に楽章の間には拍手をしないのが基本です。
礼儀ではありません。基本と思っています。
楽章と楽章の間はそのまま音楽の一部です。
前の楽章の余韻を感じるように間をおいてゆっくりと次の楽章に入ったり、ほぼ間を空けずにすぐに次の楽章に入ったり、この間も音楽の一部です。ですからそこを拍手で止められたら、極端に言えば、音楽にならなくなります。

オペラのアリアなどはその度に拍手が起きます。
それは良いでしょう。そのようにできています。
でも交響曲や今回の弦楽四重奏曲などの楽章間はそれとは違います。

プロの音楽家の中でもそこを寛容に語る人もいます。
ルールを知らないのに拍手が自然と出たのだから、聴衆は感動したはずです。ですから、拍手をもらって悪い気はしないでしょうし、ヨーロッパでも楽章間の拍手はよく有る話と聞きます。
でもそれが音楽家の本当に心からの発言なのでしょうか。それともプロとして諦めての発言なのでしょうか。

「そんな面倒なことを書くと、クラシックの演奏会に初心者が行かなくなるかも」という人もいるかも知れません。
私はそうは思いません。
あらゆるジャンルにこのような心得はあるはずです。
サッカーを観に行くとき、大相撲を観に行くとき、ラーメン屋に行くにもルールのある店があるでしょう。
行くのなら、そこの文化やルールを尊重すべきです。
誰かが、そのジャンルの楽しみを伝えて、そしてほんの少しだけのルールを事前に教えれば良いだけです。できれば最初は連れて行ってあげれば良いですね。
初心者は周りの人の空気を読んで一緒に行動すれば、それだけで十分楽しめるはずです。

ただし逆に作法を知っているのかも知れないけれど、終わった瞬間ブラボーを叫び続ける空気読まない人や、楽章間のわざとらしい咳払い、アンコールの際のおきまりの手拍手などは逆に興ざめだとも感じています。

今回の演奏会では休憩の後で「次のシューマン弦楽四重奏曲第3番は全部で30分程の曲です。全部終わってから拍手をお願いします」とアナウンスが入りました。
珍しいことでしたが、会場に笑いが起こり、それだけで解決しました。
私はクラシックコンサートの冒頭に「携帯の電源を切るように」とか「会場内の飲食をしないように」などのアナウンスと一緒に、このようなアナウンスをしても構わないと思います。

もちろん、このコンサートは良かったですよ。
そこだけは再度強調しておきます。