2013年12月16日月曜日

3.11と弁護士 震災ADRの900日

「3.11と弁護士 震災ADRの900日」
仙台弁護士会紛争解決支援センター編
株式会社 きんざい
2000円+税



仙台弁護士会紛争解決支援センターの力作です。

この本が力作であることは元より、東日本大震災の直後から今まで地域の紛争解決に尽力したからこそ書くことができる本ですから、仙台弁護士会のその点に関しても併せて賛辞と感謝を述べたいと思います。

仙台弁護士会は早々と「東日本大震災紛争解決支援センター(震災ADR)」を立ち上げて、震災に起因するとても多様な紛争の解決のために活躍されました。

震災に起因する紛争は、複合的な問題が含まれています。
だから各専門家が協力して被災者のために動かなければなりません。
専門家の鑑定無しでは法的な話し合いが進まない事例も多数ありました。
その点では私達土地家屋調査士会ADRセンターも少しお手伝いができました。
もちろん、紛争解決の窓口はやはり総合的なものになりますので、弁護士会が震災ADRを立ち上げてくれたからこその被災地貢献だと思います。

また震災に起因する紛争は、文字通り犯人は震災です。
犯人が当事者以外だから解決が簡単な場合もありますが、むしろ解決が難しいことも多いです。
そこに紛争解決の難しさがあります。

この本にはとても具体的な事例が載っています。
被災地の土地家屋調査士や自治体の担当者はもちろん、他の地域の弁護士以外の方々にも、とても参考になるものと確信しますので、私は強く推薦致します。
防災関係の座右の書にしても良いのではないでしょうか。

以下に目次を抜き書きします。
目次だけ読んでも興味が湧くと思いますので。


序 章 震災ADRの概要(阿部弘樹)
 
第1部 震災ADR事例紹介   

第1章 賃貸借関係の紛争   

 1 建物賃貸借の紛争(1):賃料の減額   
ケース1 納戸・窓ガラス破損による生活上の不便と損害額の算定
ケース2 倒壊の危険性による解約
ケース3 台所等の損壊による損害   

 2 建物賃貸借の紛争(2):建物明渡しと立退料   
ケース4 家屋滅失と建物賃貸借契約の解約
ケース5 退去時の原状回復義務および敷金の返還
ケース6 大規模半壊による退去の可否
ケース7 「全壊」と「滅失」の関係および賃貸人の修繕義務
ケース8 全壊建物の明渡請求
ケース9 修繕が不可能な物件における損害の算定
ケース10 修繕が不可能な物件における明渡請求   

 3 土地賃貸借の紛争   
ケース11 建物周囲の損傷における補修義務の有無   

第2章 建設物の倒壊等による相隣関係の紛争   

 1 家屋損壊による紛争   
ケース12 屋外駐車場の自動車への建造物の落下
ケース13 外壁の落下による建築物の損傷
ケース14 余震による落下物防止義務の有無   

 2 土地の液状化などによる紛争   
ケース15 隣地からの流水と液状化   

 3 その他の工作物の倒壊による紛争   
ケース16 ブロック塀の倒壊による損害(1)
ケース17 ブロック塀の倒壊による損害(2)
ケース18 擁壁の倒壊による損害   

 4 漏水事例   
ケース19 閉栓忘れによる漏水による損害
ケース20 水槽の転倒による損害
ケース21 マンション上階からの漏水による損害(1)
ケース22 マンション上階からの漏水による損害(2)
ケース23 地下における漏水の損害   

第3章 津波被害(目的物の消失)の紛争   
ケース24 引渡前の自動車に対するローン
ケース25 引渡後の建築請負工事代金の支払
ケース26 津波による寄託物の流出(1):時計のケース
ケース27 津波による寄託物の流出(2):自動車のケース   

第4章 労働関係の紛争   

 1 内定取消し   
ケース28 震災後の内定取消し   

 2 業務中の災害   
ケース29 津波による業務中の従業員の死亡   

第5章 行政との間の紛争   
ケース30 地方公共団体の復旧作業による漁船の損傷
ケース31 道路の設置管理における瑕疵と過失相殺   

第6章 その他の契約関係の紛争   
 1 震災により瑕疵が明らかとなった事例   
ケース32 耐震性に優れたことを謳った住宅の損害
ケース33 建物付帯設備の転倒による損害   

 2 震災後の補修工事が不完全な事例   
ケース34 震災後の修繕工事における瑕疵
ケース35 被災者生活再建支援事業補助金の取扱い   

 3 債務の減免を求めた事例   
ケース36 保証人死亡時の任意整理   

 4 震災を理由とする解約トラブル   
ケース37 被災マンションにおける賃貸借契約の解約   
 
第2部 震災ADRの現状と課題   

第1章 統計と分析(伊藤敬文)   

第2章 「2.5人称の視点」をめぐって――臨床法学としてのADR(斉藤睦男)   

第3章 提 言(仙台弁護士会プレシンポジウム準備運営プロジェクトチーム)   

巻末資料 
仙台弁護士会紛争解決支援センター規則
仙台弁護士会紛争解決支援センター手続細則
仙台弁護士会紛争解決支援センター手数料細則
仙台弁護士会紛争解決支援センター手続細則の特則を定める細則   

あとがき   

コラム一覧   
コラム1 貸している建物が破損したら?
コラム2 借家が壊れた! まだ住めるの?
コラム3 借りた土地・建物の価値はいくら?
コラム4 我が家は「全壊」なのに「半損」?(建物の壊れ具合に関する用語)
コラム5 大震災後はマンション管理のトラブルが多発する?!
コラム6 震災給付いろいろ
コラム7 こんな事例もありました(その1)
 受領後の弔慰金等を親族間でどう分けるか(異順位の者がいる場合)
コラム8 国も賠償責任を負う?
コラム9 お隣さんのブロック塀が崩れてきた! どうしよう…(民法上の不可抗力)
コラム10 こんな事例もありました(その2)
 弔慰金等の手続で誰が代表となるか(同順位の者が複数の場合)