2012年12月29日土曜日

東電の損害賠償と未登記建物

世間は仕事納めをしています。
実家に帰る人々の動きも見られるようです。

日本経済の先行きに少し希望が見えたのか、今年は海外旅行をする人の数が少し増えているようで、喜ばしいことでしょう。

ただし、東日本大震災により、いまだに肉親が行方不明の方もいることも、今も仮設住宅で暮らす人達の生活は何も変わっていないことも、もうひとつの日本の現状です。

全国の皆さんに、いつも被災地のことを考えておいて欲しいとまでは言いません。
被災地の人間も積極的に気分転換をしていますし。
でも何かの切っ掛けで思い出して欲しいと思っているだけです。

被災地の直接的なニュースは少なくなってきましたが、震災関連のニュースは意識していると結構あるものです。

先日の震災報告会でも福島会の土地家屋調査士から発表させて戴きましたが、あの放射線被害の地区の未登記建物の登記依頼が来ているそうです。
そして、あの展示した防護服を着て建物調査に入っているそうです。福島の土地家屋調査士個人としても複雑だと思います。

建物は新築や増築をしたら、その所有者には一ヶ月以内に登記する義務が課せられています。
建物の新築、増築、取り毀し等の工事をしたら、登記す事べきであることは土地家屋調査士として当然に主張すべきと思います。私もこれからも機会ある度に訴えていくべきだと考えています。

ただし、それとこれとは違います。損害賠償ですから。

これについては、被災地の人間は自治体も含めて断固抗議をしています。
未登記であろうと、固定資産税の課税台帳で建物とその所有者が特定できるのなら、損害賠償は速やかにすべきであると主張しています。
しかし、現行では様々な問題があり、情勢の見通しは芳しくないようです。以下に報道された新聞記事三回分を転載致します。

問題は、政府や東電がこの問題をどう捉えているか、どう解決しようとしているか、そこに腹が据わっているかだけの問題だと私は考えています。

そもそも「ダンプカーで民家に激突していながら、あなたの建物は未登記だから損害賠償しません」という言い方を、加害者が言える世の中が間違っているのです。


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以下福島民報の2012/08/14の記事です
リンクが切れないように念のため全文を転載させてください


【東電賠償 建物修復費先行払い】未登記の住民、困惑 支払いの対象外 避難区域 11市町村問い合わせ続々


 東京電力の財物賠償基準に盛り込まれた建物修復費の先行払いをめぐり、不動産が未登記だったり、名義を変更していなかったりする住民の間に困惑が広がっている。東電は登記された建物の面積に応じて修復費を先払いするが、未登記や名義が違う場合は対象外としているためだ。新たに登記する場合は費用や時間がかかるなど住民の負担が増す。対象となる避難区域11市町村には問い合わせが相次いでおり、東電に対して柔軟な対応を求める声が上がる。
■反発
 「どうにも納得がいかない」。県内の仮設住宅に避難している50代の会社員男性は戸惑う。
 男性の自宅は40年ほど前に祖父が建てたが、不動産登記はしていない。東電に問い合わせたところ「登記をしてほしい」と求められたという。
 しかし、家の図面は既になく、登記するには土地家屋調査士に家の測量などを依頼しなくてはならない。名義変更もしておらず、建物を自分の所有にするには祖父の代までさかのぼって相続権利者の同意を得る必要がある。司法書士に相談したところ、10万円以上の費用がかかると言われたという。「地方では祖父の家を相続せずに使うことはよくある。被災者の負担が増すような仕組みはおかしい」と指摘する。
■相談500件超す
 市町村には問い合わせが相次いでいる。福島民報社の調べでは、浪江町の約200件を最多に田村、南相馬、川俣、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、葛尾、飯舘の各市町村で計500件を超える。「未登記だと支払われないのか」「祖父母の代から名義を変更していない」といった内容が多いという。
■釈明
 東電は、不動産登記を先払いの条件にした理由について「不動産登記が一般に公開されており、賠償額の算定などが迅速に行えるため」としている。
 担当者は「不動産登記を求めるのはあくまで先行払いするための対応。本賠償は固定資産税評価額などに基づき支払うことになる。1日も早く本賠償できるよう努力する」とも話す。市町村からは「納税証明での支払いにも対応してほしい」との要請も出ている。
■つかめぬ実態
 不動産登記には建物の面積や所有者などが記されている。ただ、不動産登記法では所有者が変わった場合も、名義を変更することは義務付けられていない。
 福島地方法務局によると、古い建物については登記自体がなされていないケースもある。このため、未登記だったり、名義が変更されていなかったりする建物がどの程度あるかの実態把握は不可能という。
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同様リンク切れが無いように全文転載させてください。


【土地・家屋の財物賠償】台帳閲覧 法の壁 支払い遅れ必至


 東京電力福島第一原発事故による土地・家屋の財物賠償で、算定の基となる固定資産税台帳の取り扱いに法の壁が立ちはだかり、支払いの遅れが必至となっている。資源エネルギー庁は、市町村から東電に台帳データを提供してもらう方針だが、閲覧には所有者の同意が必要になるためだ。対象は12市町村、最大約6万4000件に上るとみられ、市町村にとって膨大な事務作業が生じる。エネ庁は市町村の負担をできるだけ少なくしたい考えだが、具体策は見えない。
 エネ庁 東電にデータ提供を 市町村 所有者の同意が必要 
■個人情報
 「市町村に固定資産税台帳のデータを提供してもらうことは、最も早く財物賠償を行うための方法の1つ」。資源エネルギー庁の担当者は説明する。台帳には土地、建物の地目、面積、評価額、課税標準額などが記されている。6万件以上にも及ぶデータを東電がまとめて入手できれば、賠償基準の計算式に基づきコンピューターで一気に額を算定することができる。
 だが、市町村側は慎重だ。ある町関係者は「固定資産税台帳は、いわば『個人情報の固まり』。所有者の同意が必要で、早く手続きに入りたいのはやまやまだが、そう簡単には提供できない」とする。別の町の担当者も「賠償のためとはいえ、通常なら知り得ない個人情報を民間企業に渡していいのか。大量のデータが、外部に流出する可能性もゼロではない」と頭を悩ませる。
■業務膨大
 地方税法では、不動産の所有者から委任があれば、第三者の個人や企業が固定資産税台帳を閲覧したり、証明書を入手することが可能だ。しかし、委任状の発送や受け付け、さらには証明書の発行など、一連の手続きは誰が担うのか-。
 各市町村は、東日本大震災と原発事故以降、増大した業務の処理に追われている。ある町の担当者は「被災世帯だけで約400あり、不在地主も含めれば、業務量が膨大になるのは明らか。県外自治体から職員を派遣してもらっているのに、これ以上の余裕はない」と苦渋の表情だ。エネ庁は「市町村の負担増にならない方法を考えたい」とするが、具体的な対策を見いだせないのが現状だ。
■法整備
 市町村からは、賠償を迅速に進めるため、所有者の同意がなくてもデータを提供できるようにするなどの法整備を求める声もある。
 しかし、エネ庁は、法改正などを行う場合、「法整備自体に時間がかかり、支払いが遅れる。現行制度の中で最善の方法を探りたい」との考えを示す。一方、地方税法を所管する総務省は「法改正も含め、どのような方法で賠償していくのかは、まずエネ庁が検討すること」との姿勢だ。
【背景】
 東電が発表した土地、家屋などの不動産の賠償基準では、宅地は固定資産税評価額に係数(1.43)を掛けて算出する。建物は、事故前の固定資産税評価額と築年数に応じて算定する方法の他、平均新築単価による算定方法など3つの方法から選べる。財物賠償の請求受け付けは避難区域再編が条件となっている。このため、再編が進んでいない町村では、支払い時期がさらに遅れる可能性もある。
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【避難区域の家屋補修費賠償】請求書7000通届かず 東電、登記簿優先し発送

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域の家屋補修費の賠償で、東電が対象者に送付した請求書2万4000通のうち3分の1に当たる約7000通が宛先不明で届いていないことが25日、分かった。避難実態を十分に確認しないまま不動産登記簿を基に発送したことが原因。被災者が郵便物の転送サービスを利用していなかったり、登記簿上の所有者が死亡しているなどのケースが続出した。補修費の支払いを受けることができない事態も懸念されるが、同社は対応策を見いだせていない。
■不明
 東電は7月下旬から、11市町村の避難区域内にある建物の所有者約2万4000人に請求書の郵送を開始した。
 この際、精神的損害賠償の受け付け手続きで独自に把握した対象者の名前や避難先、元の住所などの情報と、登記簿の記載を比較。名前と住所が一致しない場合には、登記簿の所有者の住所に請求書を送った。法的に位置付けられた登記簿のデータを信頼し、優先して活用するべきと判断したためだ。
 ただ、早急な対応を求める声もあり、避難実態の把握が十分にできなかった。避難先までの転送サービスを郵便局に申し込んでいない対象者の請求書は宛先不明となり、先月末までに約7000通が東電に送り返された。登記簿上の所有者が死亡しているにもかかわらず、名義変更されていない場合についても宛先不明となったという。
 東電福島地域支援室は「多くの方に請求書が届いていないのは事実で、申し訳ない」としているが、「対応策は検討中」とするにとどまっている。
■不満
 浪江町や楢葉町などの自治体では、東電が請求書の送付を始めた時期に「知り合いには届いたが、うちには来ない」といった問い合わせが一日に数件程度あった。担当者は土地・家屋の財物賠償の支払いの際に合わせて請求できることなど制度内容を説明した。
 当初、請求書が届かず直接、東電に問い合わせたという大熊町の男性は「東電は準備不足だ。被災者自身に問い合わせの手間を掛けさせるのは納得いかない」と不満を漏らす。
■懸念
 来年1月以降に本格化する土地・家屋の財物賠償でも、請求書の届かない事態が多発すると想定される。
 財物賠償では市町村の多くが固定資産税課税明細書を所有者に送付する。所有者は明細書を添付した上で東電に請求書を送る方式を採る。しかし、先行して送付を始めた葛尾村では、これまでに郵送した約860通のうち、40通程度が宛先不明で戻ってきた。
 村は固定資産台帳に記載された個人が亡くなっているケースがあるためと分析している。村総務課の担当者は「(こうした事態を)放置できず追跡調査するが時間を要するだろう。人口の多い市や町は、さらに対応が大変ではないか」とみている。
 県原子力賠償支援課は「財物賠償は生活再建のために重要。請求書の届かないケースがあってはならない」として、東電にあらためて対応を求めていく。
【背景】
 避難区域の家屋補修費の賠償基準は東電が今年7月に発表した。一日も早い生活再建につなげるため、土地・家屋の賠償額のうち一部を先に支払う。家屋が避難区域にある被災者が対象で、賠償額は1平方メートル当たり1万4000円、最大1000万円まで。避難期間中に雨漏りなどで破損した家の内装、水道管などの交換・修理が対象。補修費として支払われた分は、土地・家屋の財物賠償額から差し引かれる。