土地家屋調査士事務所の開業・運営ガイダンスについて、なかなか集合形式のガイダンスができない中、お困りになって私に連絡をくれた方については個人ガイダンスで対応しています。
本日のブログでは、一昨日お電話でお話しした方で、ある程度の高年齢で合格した方の話を書きます。
彼は「土地家屋調査士試験に合格してから『ある土地家屋調査士法人』に2年間勉強に行った」とのことでした。
「その法人で2年間何をしていたか」と尋ねると「2年間測量の助手をしていた」とのことでした。ただポールを持っていただけのようでした。実際に今の段階で何もできないようです。
この方には複数の論点でアドバイスをしましたが、その中の1つの論点について書きます。
その法人に何を期待して行ったのか。そしてそれが得られたのか。それが得られないと気が付いて今何をしているのか。
「その法人ではCADの使い方も教えてもらえなかった」とのことでした。
比較的多くの人員を雇っている法人が、中途採用で高年齢の人に手取り足取り教えるだろうと思っているところで、世間を見ていないような気がします。
それで辞めたのか、辞めさせられたのか、そこはどちらであっても彼のニーズには合っていないでしょう。
いつもこのブログで書いているように、自分の力で生きていくのが独立開業なのに、世間に対して甘ったれすぎていると思います。
法人が求人するのは働く人が欲しいからで、誰かにノウハウを教えたいわけではありません。
比較的人数の多い法人への就職は、特に歯車のひとつになる確率が高いですね。雇用者側の視点に立てば、新人に新しいことを次々に教えるよりも、同じことをずっとさせている方が効率が良くて、リスクも少ないですから。
逆に個人事務所ならもう少し様々な業務に触れる機会があるのかも知れませんが、それも個人事務所の業務範囲と先生の能力と、先生との相性もあるし、当たり外れがありますね。
だから、事務所に入る前に、お互いの希望と考え方をしっかりと話し合う必要があります。
毎回書いていますが、勉強は基本独学です。その独学で方向性に迷うことがあるから師匠が欲しいだけです。
鈴木修事務所は、勤務時間内にもかなりしっかり教えています。それでも学ぶのはやはり個人です。力が付くのかはやはり自分自身の問題です。
世の中のあらゆる場面で、勉強を教わりたかったら本来お金を出すべきでしょう。
私は、どうしても長期で勤めることができない事情の方から実際に授業料をもらって、そのための時間を確保して個人指導をしたこともあります。
本来ノウハウを得るとはそういうものです。
それを補助者として給料をもらいながら「教えてもらえない」とか言っている段階で、個人業に対する覚悟と戦略がありません。会社員だった頃の甘えが出ているのでしょう。
土地家屋調査士試験に合格することと、土地家屋調査士で食べて行けるということには、とても大きな段差があります。
それはあらゆる業界でも見られることでしょう。弁護士でも医者でも試験取っただけではどうにもなりません。調理師免許取っても大繁盛のお店が保証されません。
資格試験の受験予備校にも多少の問題があるのかも知れませんが、本人に合格後の修行の要否と深さと計画が念頭にないのは困ったものです。ただどこかに在籍すればノウハウは身につくと考えていることだけでも、この業界で生きていくのは無理でしょう。
そんなに世間を見ていないのなら、開業してもお客様の心も掴めないでしょうね。
年明けの1月6日に筆記試験の合格者の発表があります。合格かなと思っている方は、この年末年始に何をすべきかもう一度考えて欲しいと願っています。
いずれガイダンスも開催します。
しかし、その前に本人がしっかり考えてください。自分のことですから。