「ブレードランナー2049」
1982年制作の映画「ブレードランナー」の続編です。
35年前の映画のリメイクでなければ、オマージュでもなく、本当に続編です。
好きな映画の続編を観ることは怖いのです。
同窓会で好きだった子に会うような。
観たいような観たくないような。
でも結局観ないわけにはいかないのです。
ブレードランナー(前作)は1982年(35年前)の映画です。
有名なSF映画で、ここで紹介するまでもないのかも知れませんが、さすがに35年前の映画ですから、一応書いておきます。
この映画は、たとえばスター・ウォーズやETなどのアッケラカンとしたSFと違って、世界観が暗く、映画自体もわかりづらくできていたので、好き嫌いに分かれるようです。
舞台は2019年のロサンゼルス。(なんと2年後?)
環境破壊により人類の大半は宇宙に移住し、地球に残った人々は酸性雨が降りしきる無国籍文化の雑然とした都市で生活している。過酷な宇宙開発の労働は、遺伝子工学の成果であるレプリカントと呼ばれる人造人間を従事させていた。レプリカントは人間と見分けが難しく、数年経つと感情が芽生え、人間に反抗する事例があったので、安全装置として寿命を4年と設定されている。
しかし、それでもレプリカントが脱走し地球に逃れる事件が多発するので、そのレプリカントを始末(解任)する警察の担当者がブレードランナーである。
事件が起きた。ブレードランナーを退職していたデッカードが呼び出された。
デッカードは情報を得るためレプリカントの開発者であるタイレル博士と面会し、彼の秘書のレイチェルもレプリカントであることを見抜く。
レイチェル自身はレプリカントである認識がなく、アイデンティティが揺さぶられる。そんなレイチェルにデッカードは惹かれていく。
これが前作、この前作の描く世界観は全世界に衝撃を与えました。未来は単純に明るいわけではなく混沌としていて、それまでの他の映画で描く未来とはまったく違う未来の映像が続きます。それでいて妙にリアリティがあるもので、その後のSF映画などに多くの影響を与えたものです。
この映画では、丁寧な説明は省かれていて、なおかつ謎のまま終わらせた要素も多く、テーマの深さに加え、映画を観た後にすっきりしない気持ちがたくさん残る映画でした。
だからこそ、これらの謎について、カルト的ファンの間で35年間の議論が続いています。
これらの前作の世界観を踏まえて、前作の30年後の世界を描き、カルト的熱狂ファンも満足させる続編を創るのは最初からとても難しいものだと思われました。
では、今回の続編は何を描いたのでしょうか、
2049年、ブレードランナー「K」は、ある事件の捜査中に、人類とレプリカントの間に存在する不安定な秩序を揺るがす大きな謎にあたる。どうも、レプリカント開発のウォレス社に巨大な陰謀があるらしい。謎を解明しようと行動する中で「K」自身のアイデンティティがわからなくなる。その過程で、この謎の鍵となる男にたどり着く。
30年間行方不明になっていたブレードランナー、デッカードだった。
彼は何を知って、何を守り続けてきたのか。
前作の世界観を壊さずに、前作の謎に答えながら、情感溢れる素晴らしい映画に仕上げています。
AI登載のホームオートメーションシステムの「ジョイ」が「K」の恋人です。「ジョイ」はキュートな女性の姿をしたホログラフィーで現れるが、自らの意思も感情も持っています。
そのAIである「ジョイ」や、前作のレイチェルや今作の「K」を含めたレプリカント達のアイデンティティを表現することで、この2作の映画は「人間とはなんなのか」「何を持って人間とするのか」を提示しています。
確かにテーマもストーリーも難しいかも知れないけれど、今作は前作のカルト的な趣は残しながらも、アクションもあり、涙もあり、前作の謎を回収していて、むしろわかりやすくなりました。
ネタバレしないで、この映画の本当の面白さを伝えるのは難しいのです。
だから、観て欲しいです。
前作を観ていないなら、できれば前作を観てからにしてください。
それが無理なら、今作を観た後でも前作を観てください。
ストーリーや世界観がわかるだけでなく、今作の底に流れる情感が理解しやすくなるでしょう。
私は初日から二日続けて観てしまいました。
それにしても「ジョイ」、かわいいね。
彼女に会えるなら、あと30年待っていようか。