2021年4月12日月曜日

試験合格して定年後に土地家屋調査士になりたいTさんへ

現在49歳であり、調査士とはまったく関係の無い仕事をしていますが、定年後(7年後)に調査士に関する仕事を行いたいと考えています。このような場合は、働き口(再就職先)はあるものなのでしょうか。また、どのように探したらよろしいのでしょうか。 


昨年試験合格したTさんからのご相談です。

定年後のために何か資格を取っておきたいという方も多いですが、そんな曖昧なモチベーションの中ではなかなか合格しません。その中で仕事の合間に勉強して合格されたことに心からお祝いを申し上げたいと思います。

さて、お祝い直後に厳しいことを言いますが、このブログでいつも書いているように、土地家屋調査士は専門家です。専門家のスキルというものは、素人がちょっと勉強した程度では、まったく追いつかないものです。だからこそ、国民の為の専門家なのです。
土地家屋調査士を名乗って職業としたいのなら、試験合格レベルでは話になりません。そこからどれだけ学ぶかが何よりも重要です。

逆に土地家屋調査士として本当に力を付ければ、絶対に食べていくことができます。土地家屋調査士は実力の世界です。

とは言っても、この「本当の力」がどの程度なのかが誤解されているようです。このブログの別の記事でも書いていますが、とにかく登記手続と測量技術だけでは難しいでしょう。

そして、この力の付け方ですが、一般的には土地家屋調査士事務所の補助者になって学ぶことが基本です。

この点についても、いつも書いているのですが、どこでも良いとは言いづらいです。事務所の方向性と、事務所の先生との相性も大きいでしょう。

もうひとつ、これもいつも書いていることですが、一般的に補助者を募集している事務所は、仕事をしてもらいたいから雇うのであって、補助者を教育したいということが第一目的ではありません。修行と就職を混同してはいけません。土地家屋調査士と会って希望を伝えて、お互いに納得してから働くべきです。

Tさんの場合は、どうでしょうか。補助者募集については、土地家屋調査士会に問い合わせてもよろしいでしょうが、定年後で資格試験に合格しただけの何もできないTさんを雇うところは少ないでしょう。試験合格程度では、雇っても事務所にはメリットはありません。即戦力でもなく、長く勤めるつもりもないのなら、まともな事務所では雇いにくいでしょう。

もちろん、何かと募集している土地家屋調査士法人もあります。何かと募集しているという事務所などは、何かと人が辞めているからなのかも知れません。そこに雇ってもらったとしても、たとえば測量の補助だけを毎日やるのなら土地家屋調査士としてのスキルは何も伸びません。


Tさんに私がアドバイスするなら、「定年まで待ってはいけません」ということです。

「試験合格の知識だけでは何もならない」と言いましたが、今から7年後ではその試験合格の知識すら消え失せているでしょう。

私がTさんにお勧めすることは、今のお仕事の休日などに土地家屋調査士事務所のお手伝い(アルバイト)から始めることです。アルバイトなら探せばあると思います。

Tさんの職場がアルバイト禁止なら、お金をもらわなければ良いだけです。むしろその分、教えてもらえるかも知れません。将来の年収のために、休日に無給で働くだけのことです。

教える気がある事務所で、Tさんの休日だけ使っても7年勉強すれば、それなりの実力も付くでしょう。もちろんそれだけで独立は難しいと思いますが、何かの分野で即戦力になっているのなら、7年後に雇ってもらえる事務所もあるでしょう。そこで実力の仕上げをすれば良いでしょう。時間は十分有ります。

なんと言っても土地家屋調査士は自分で定年を決められるのですから。

逆に土日は休みたい。定年までは勉強のために有休も使いたくないというのなら、Tさんは個人事務所経営には向きません。定年後も今の仕事を活かせる分野を考えておいた方が良いでしょう。