私の新人研修会でいつも「経験を作ること」を説明しています。
新人に向かって「どうですか?測量は慣れましたか?」と聞きます。
そうすると「いえ、私は土地の登記の仕事が少なくて、まだ測量に自信がありません」と言う受講者がいます。
私は「あなたはお客様で練習しようと思っていたのですか?」と言います。
与えられる経験値を待っているだけなら、年功序列の世界で生きれば良いのです。
私たち専門資格者は自分で掴みに行かなければなりません。
実は、私たち土地家屋調査士だけでなく、司法書士も行政書士も弁護士も税理士も、とにかく仕事を受けてから調べる人が多いです。
お客様に対してとても失礼な話です。
あらゆる仕事は、業務能力が有るから看板をあげるのです。
注文戴いてからレシピを探す料理人は有り得ないでしょう。
陰で数知れないほどの調理の練習をしてから、その料理をメニューに入れるはずです。
新人は看板をあげてしまったのなら、ひたすら練習しなければなりません。
土地家屋調査士という看板をあげた瞬間に、土地家屋調査士のすべてのメニューを掲示したことになります。
だから私は毎日公園を測量していました。
同じ公園だから、毎日課題を変えて測量していました。
そして毎日図面を画いて、登記手続のシミュレーションをしていました。
以前、巨大掲示板で「鈴木は仕事もせずに毎日測量練習しているなんて、どんなお坊ちゃまなんだ」と書かれたことがあります。
匿名掲示板でぼやいている人に反論する気はありませんが、お坊ちゃまなら練習もしませんよ。当時は午後から午前3時頃までアルバイトして収入を得ていました。
大事な資格を安売りしたくなかったので、他のアルバイトで収入を得ていました。
若いのだから睡眠不足程度では死にません。少なくても私はそうでした。
早く一人前になりたかったのです。
こんな内容を、先日の長崎会新人研修会でもお話ししました。
すると、その中の受講生の一人から以下のようなメールを戴きました。
「私は、土地家屋調査士の試験勉強期間から鈴木先生のブログをちょくちょく読ませていただいていました。公園の測量の話、どの本を読み進めていけば良いのかという話は、わずかながらでも実行しています。
今回鈴木先生の講義を聞き、公園の測量の話は経験を自分で作って積み上げるための一例だったのかと初めて気付かされました。
私は、研修会の終了後すぐに知人の山を測量の練習場にしようと考え、その事を頼みに行きました。午前中は、山の中でどこに杭を打ってどういう測量をしてみようかと考えながら歩き回りました。午後から杭を持っていき実際に打っていこうと思います。」
とても嬉しいメールでした。
彼のように経験は自分で作ることができるのです。
理解しても動かない人がいる中で、彼はすぐに動きました。
彼は良い土地家屋調査士になるでしょう。
不動産登記手続でも筆界特定手続でも同じです。
受託など無くても、自分でいくらでも経験を作ることができます。
「仕事が来ないから経験できない。経験できないから仕事ができない。」のではありません。
当たり前の話です。
「仕事ができないから仕事が来ない」のです。