2016年8月11日木曜日

シン・ゴジラ

12年ぶりの日本製ゴジラ映画です。評判が良いようです。



往年のゴジラファンも納得させながら、今ゴジラを作る意味とは何なのか。
ハリウッドではなく日本で作る意味とは何なのか。
「ゴジラ」というビッグタイトルを掲げれば、何を作っても注目されるので、制作側のハードルはかなり高いと思います。

総監督・脚本は「エヴァンゲリオン」の庵野秀明、監督・特技監督は樋口真嗣、主演は長谷川博己です。
なお、日本製のゴジラを表現するために、野村萬斎にモーション・キャプチャーをお願いしたとのこと。映画を観ているときには野村萬斎による動きとは知らず、観終わってからの情報だったのですが、後からなるほどと思いました。
間違いなく、今の日本で作る意味があった映画だと思います。

この映画は、既に巷の評判になっているし、内容も今更解説するまでもないでしょう。ネタバレ無しにこのブログで感想を書くのも難しいのですが、ちょっとだけ私の感想を書いてみます。

もちろん重要なネタバレに気をつけながらも少し内容に触れますが、一切のネタバレは困るという方は、念のために以下を読まないで映画に行ってください。
あの映画に予備知識は不要ですから。

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さて、この映画、私も予備知識まったく無しに観てきました。
私の想像していたものと方向性が違いましたが、観て良かったと思います。

まず、ゴジラです。
ゴジラがとてもパワーアップしています。
歴代のゴジラの中でも最強でしょう。
何しろ一代で進化するのですから。

最初、海で魚類のような形をしているのですが、陸に上がって何代かの進化をし、我々の知っているあの形に進化するのです。

(えっ、進化することもネタバレですか?
この件は様々なところで書かれているでしょう。
本質的な部分ではないから、これはセーフと思っていますが。
えっ、ダメ?
だから「以下を読まないで」って言ったでしょう。)

さて、登場するゴジラが最強ですし、タイトルも「シン・ゴジラ」ですが、実はゴジラが主人公ではありません。
この映画で描かれている主人公は、ゴジラではなく、むしろ日本国の組織です。
具体的な主人公は内閣官房副長官である矢口(長谷川博己)ですが、監督が描きたかったのは矢口をアンチテーゼとする日本の既存組織だと思います。

何らかの大きな事件や事故が起きたとき、日本政府は、各省庁は、どう動くのか。
そこが監督の一番描きたかったところなのでしょう。
この映画のゴジラは、組織が対応すべき厄災の表象として存在しています。
だから「シン・ゴジラ」は怪獣映画と言うよりも災害対策映画と言えるかも知れません。

ゴジラが現れた!
「前例が無い。そんな巨大生物はいない」

自衛隊を出動させるべき!
「自衛隊を動かすことは、世論を考えると難しい」

自衛隊に攻撃させるべき!
「逃げ遅れた人がいる限り攻撃はできない」


様々な議論が巻き起こります。
そこで見られるのは「縦割り」「事なかれ」「先送り」「責任のたらい回し」...
議論は有っても良いですが、時間がかかってすべてが後手に廻ってしまいます。
災害対策や危機管理の際には、すべての決断に即決を求められます。
これは東日本大震災の際にも問題になったことです。

そんな中、日本のリーダーがあっけなく死にます。
(ネタバレですか。これも本質的なところではないので私はセーフだと思っています。)

そして、その後のリーダーの選び方に、日本の重要なテーマが示されています。
(ここはさすがに書かないよ)

このように、日本国が動くことができない中で、ゴジラは進化を続け、被害も次々に拡大します。
日本が手をこまねいている間に、日本だけの問題から世界の問題になってきます。
もし、ゴジラの進化の先に羽が生えたら、世界中に飛んで行くことになったら・・・
そんなことを懸念した世界は、ついに動き始めます。

当然、日本にはアメリカからの圧力がかかります。
「通常兵器では通用しないので核攻撃を!」
東京で核兵器を使うことを要求されます。
日本はどう判断するのでしょうか。

ここからが、後半の見どころです。

さて、歴代のゴジラは単なる怪獣ではないです。
日本人なら知っています。

初代ゴジラとは何だったのか。
その背景に、人間が過去犯した過ちの核や放射能を背負った宿命の存在だったはずです。
ハリウッド版の「恐竜が暴れた」というジュラシック・ワールド的なパニック映画とは本質的に違うのです。

そして、その宿命の存在に対して、我々人類はどう立ち向かうのか。
そのゴジラの本質だけは、この映画も外してはいませんでした。
間違いなく、今回のゴジラは厄災の象徴です。
たとえば、5年前の東日本大震災や福島放射能被害などを表しています。
その後も世界各地で頻発する自然災害、戦争、その他の厄災(怪獣)に対して、人類の英知と決断が試されている映画なのです。

この映画、深読みすればどこまでも深読みできるでしょう。
政府や日本の在り方、国連やアメリカなどに対する外交の考え方、そして自然災害や防衛に関すること、保守の立場でもリベラルの立場でも、この映画を利用して勝手に語ることができそうです。
それはこの映画が望んでいることでも無いでしょうが、国民として日本を再考する良いシミュレーションという意味はあるでしょう。

また、監督が庵野氏なので、エヴァンゲリオンとの類似点を語るのも、ファンの間ではとても刺激的なトークになるでしょう。既にあちこちで深読みの議論がなされているようです。
私は、この類似点については監督が意図したものではなく、庵野監督が作るとこうなるのだと思いますが、これもファンの間で勝手に楽しむことは意味があるでしょう。

登場人物の数の多さと全員の早口セリフによる情報過多がもたらす独特の緊張感はとても上手いと思いましたし、とにかくこの映画は、観てから語りたい要素がとても多いです。

私ですか?
結局、私は純粋にゴジラを楽しみました。

もちろん最初の日本国のシミュレーション部分も楽しみましたが、結局私が楽しめたのは最終的にゴジラと総力戦をやるときの電車や建物の使い方などでした。
(ここは詳しく説明できないから観てね)

この映画を観て2つ分かったことがあります。
私は、まだ怪獣映画から卒業していないこと、石原さとみがあまり好きでないことです。