いやあこの映画、あの予告編を観て少し舐めていました。
「バンクーバーの朝日」です。
1900年代初頭、多くの日本人が新天地を夢見て、
遙か遠くカナダへと海を渡った。
しかし、そこで彼らを待ち受けていたのは差別、過酷な肉体労働、
貧困といった厳しい現実だった ー
そんな中、日本人街に一つの野球チームが生まれる。
チームの名は”バンクーバー朝日”。
夢も希望も持てなかった激動の時代。
やがてチームは人々にとって、一条の光となっていく。
彼らは何を信じ、何を求めて走り続けたのか。
歴史の波間に埋もれていた”真実の物語”が今、ここに甦る。
(公式サイトより)
テレビコマーシャルをやっている…
妻夫木聡や亀梨和也など人気俳優たちが宣伝でバラエティ番組などに出ている…
こういう映画はいつも引いてしまいます。
内容も、
移民という逆境の中で野球をはじめ、体格体力でもカナダ人には敵わない日本人の弱いチームが徐々に強くなり、自分達の居場所を見つけていく…
なんか熱くて、なんか泣ける…
BGMはGReeeeNのような…(笑)
きっとそんな映画なんだろう。
勝手に思っていました。
しかしこの映画は、そんな野球による成功物語ではありませんでした。
当時の日本人の二世代にわたる移民のカナダの生活を描いています。
そこを本当に丁寧に描いています。
監督が「舟を編む」の石井裕也監督だったんですね。
3年働けば日本で一生暮らせるという評判を聞いてカナダに渡り、夢破れて日本にも帰ることができず、かと言ってカナダに同化しようともしない第一世代と、カナダで生まれて差別を受けながらも同化しようと葛藤する第二世代の対比も描いています。
第二世代を妻夫木聡や亀梨和也や高畑充希らが演じ、どうしようもない典型的な第一世代を佐藤浩市が好演しています。
その第二世代の野球によりある程度の成功を得られそうなところに、日本が第二次世界大戦に進む歴史が重なり、敵性国民と見なされる移民達とチームとの運命も描かれます。
単純な野球映画ではありませんでした。
無理な盛り上がりを創らずに、当時の移民政策や、戦争に向かう日本の状況も説明しすぎずに、淡々と進めます。
野球の場面ですら、他の監督ならもっと盛り上がりや感動場面を作り込むかも知れないと思うけれど、そこも抑えめにしています。
感心したのは、普通の映画ではセリフがほとんど無いチョイ役のはずのキャスティングに、結構有名な役者を当てていることです。
後で重要な役回りを演じるんだろうなと思って観ていると、そのままで終わったりします。
でも、さすがに存在感があり(そのように撮影していることもあるのですが)、市井の人々の一人一人が主役であるという意図が伝わってきます。
私が勝手に想像していたものよりも、はるかに良かったと思います。
逆に、勝手に想像していたものが、たとえば抑圧からのカタルシスであれば、それを期待する観客にとっては物足りない映画と思うかも知れません。
どちらにしても映画鑑賞代はペイできる映画だと思います。