2022年5月31日火曜日

独立できる業務処理能力とそれらを身につける方法について

土地家屋調査士法人でマンションの登記を担当しているKさんから質問がありました。

Kさんには、ガイダンスで直接お答えしていますが、他の方の参考になるかも知れないのでここでまとめておきます。


「 独立を考えているのですが、マンションに関する登記は独立後、仕事を貰いづらいと先輩方からご教授頂いています。独立するなら他の業務の受注を考えなければならないのですが、今は確定測量が出来ないコンプレックスがあります。測量は独学で勉強出来るものですか?また法人で勤務しながら他事務所で測量を教えてもらう事は現実的でしょうか?

また、独立を考えてる上で建物登記を極めていくということは遠回りになりますか?鈴木先生の経験を踏まえてどうお考えになるのかご教授下さい。」


Kさんの業務の8割がマンションの登記を担当しているとのことです。ですから区分建物表題登記のノウハウがKさんのスキルのほとんどということになります。

Kさんの言うように、マンションの登記が開業したての新人に発注になることは考えにくいと思います。だから就職のためと割り切るのならその法人勤めで良いと思いますが、独立のための勉強をしたいのなら、その法人で配置転換を願うか、それが難しければ早くやめる方が良いと思います。


さて、ご質問の「確定測量」については、「測量」のスキルだけでなく、「筆界調査」と、人証を得るための立会い等における「対人スキル」も必要になります。

まず「測量」ですが、私は独学で身につけました。ただし見よう見まねのトレーニングのみではなく、測量理論をしっかり身につけた上でのトレーニングです。この点は対回観測もできていない事務所で教わるよりもはるかに良かったと思っています。

ただし、この独学を誰にでも勧められるかというと難しいです。ひとりで理論マスターとトレーニングをしっかりできるのかは、後輩たちを見ているとちょっと心配です。

では「法人で勤務しながら他事務所で測量を教えてもらうこと」についてですが、法人と他事務所が、その方法を受け入れるのなら独学するよりは良いですが、事務所は選びましょう。今どき言い訳しながら任意座標でやっている事務所で教わることはやめた方が良いです。

結論として「測量」に関しては、有料の合宿などの測量研修を受講した方が結局早いと思います。

なお、「筆界調査」と「対人スキル」について独学で身に付けることはもっと難しいでしょう。「書証」「物証」「人証」をそれぞれ調査して分析していくのです。これらについては裁判に耐えうる理論構築ができなければなりません。

その中で、正しい人証を得るためにも「対人スキル」も身に付けたいですね。

Kさんの質問にある「確定測量」のノウハウには、これらの要素は入っていないのでしょう。なにしろKさんからのご質問には何も触れられていないのですから。

本人の意識にないことについて、独学することは無理です。

Kさんはまだ若いので、これらを学ぶためには、別の事務所に転職することが良いのかもしれません。


最後の質問ですが「独立を考えてる上で建物登記を極めていくということは遠回りになりますか」については、そんなことは無いと答えます。

新人が業務範囲の全部を同時に極めることはとても難しいことだと思います。

だから得意分野を伸ばすべきだと思います。狭い分野でも良いから先輩たちと同じレベルで勝負できる業務をまずは確立すべきです。

Kさんの場合は、それが「建物」ということなら、それは悪くないと思います。

建物業務を極めるのなら、経営ベースに乗ってくると思います。比較的建物を軽視している方々がいますが、その方々の問題は「極める」を誤解しているかも知れません。

建物は結構奥が深いです。

頑張ってください、応援します。



なお、「建物業務とその経営と営業」、「筆界調査確認と対人スキル」については、「鈴木修塾」でも扱います。詳細は近日発表します。

他の仕事に従事していて、どうしても土地家屋調査士事務所の補助者になれない環境にいる方、今の事務所ではその分野は学べないと思う方などのお役に立てると思います。