東京ガイダンスに参加されたKHさんからの質問です。個別に回答しましたが、他の後輩たちの参考になるかも知れませんので、ここでもまとめておきます。
「昨日はガイダンスでのお話、誠にありがとうございました。先生は、厳しい意見と仰っていましたが、自分の考えがまだまだ甘いことは承知のうえ、至極まっとうな事ばかりだと私も思います。
さて、私は5月に測量業務なしの分筆・更正登記を受託しました。その後、追加業務として近隣の筆界特定のお話をいただきました。現場は(略)。筆界特定業務が未経験であることもあり、自分では手に負えないと思い、先輩調査士にお願いすることにしました。
この時のことが、ずっと心残りとなっています。能力的には、お断りするという判断が間違ってはいなかったとは思うのですが、せっかくの機会を逃してしまったのではないか、という思いも捨てきれずにいます。
ご依頼人に迷惑をかけることは避けるべきと思ったのですが、勉強は当然として、先輩に都度相談するなりして引き受けるという選択もできたのではないか、とずっと考えています。その時点での能力以上の業務の依頼が来た場合、鈴木先生は今までどのように対応してこられましたか?」
この問題に対する回答は、答える人によって皆違うかも知れませんね。
私に質問をいただいたので私の回答をお伝えします。
質問に答える前に、「測量業務なしの分筆・地積更正登記」って部分がとても気になりますね。事前に自分が測量した土地を改めて登記の依頼を受けたということですね。他の土地家屋調査士の方が測量した図面を元に、図上分筆などの登記は絶対ダメですよ。
他の医者のカルテを見て、自分では検査しないで手術するようなものですよ。あなたの責任で患者が守れるのですか。その測量が間違っていても以前の土地家屋調査士のせいにして逃げることはできません。登記によって不利益を得た人からの訴訟はあなたにも来ますからね。また、状況によっては土地家屋調査士法違反になることも有りますよ。
この書きぶりで既に心配ですが、そこはご自分で以前測量された土地だとしましょう。
私が回答すべき今回の質問は、それとは違う論点ですからね。
さて「その時点での能力以上の業務」とは、新人にとって最初は全部かも知れませんね。「それを全部断ったら、いつまでも経験できない」という考え方もあります。
ただし、私たちはプロです。専門家として報酬をいただきます。だから「未熟のままで受託して、お客様で練習することはあり得ません」と、新人研修でいつも伝えています。
ちなみに業務遂行の能力が十分でないことは、土地家屋調査士法第22条による「依頼に応ずる義務」の中の断るべき「正当な事由」に当たります。
都度質問をすると言っても、質問の無い部分に本質的な難しさが潜んでいることもあります。最初は全部見てもらった方が良いでしょう。
たとえば上記の質問では無い部分の「測量業務なしの・・・」などでも、ご理解ください。
私なら、業務を先輩にお願いして、その条件として、その業務を先輩が処理する間、付いて学ばせていただくという選択をします。実際、私が新人の頃、そのように処理した案件も多数ありました。
最初は見せていただくだけです、教えてもらうのですから。だんだん慣れてきたら、一部を手伝わせてもらい、その部分の報酬をもらうようにします。
そうしているうちに先輩と仲良くなれば、先輩の独自の業務でも、あなたを呼んでくれて業務のこつを教えてくれることもあるでしょう。
頑張ってください。応援します。
土地家屋調査士 鈴木 修 ブログ: 鈴木修塾(経営・運営)を開催します。 (fermatadiary.blogspot.com)