土地家屋調査士新人研修の講師の場面や後輩に個人的に教えるときには、「専門家として業務をする上で大事なことは、常に法令上の根拠や技術理論を基に判断して行動すべきであり、経験則だけで判断することはとても危険である」ということをお伝えしてきました。
経験則だけでは、所詮その人の今までの環境の中でたまたま事故が起こらなかったか、あるいは起こっても気が付かなかったという可能性があります。
そうは言っても、経験が絶対的に不足していることもやはり問題があります。
ですから、開業する前には先輩の事務所で補助者をすることをお勧めしています。
しかし、どうしても補助者勤めのできない方もいます。そのどうしても補助者ができない環境の方については、何を注意して良いか分からない中で、すべてに細心の注意を払って経験を積まなければなりません。
そこで、補助者経験が少ない人や、より高みを目指す人のために鈴木修塾を開催していますが、その中でも受講する方に「時間を作って、できるだけ複数の先輩のお手伝いをさせてもらい、様々な経験を積みなさい」と言ってきました。
ただし、私のところに相談に来る方々の中には、ただ先輩の手伝いをしているだけで満足している人が複数いて、このことにとても驚いています。
測量の手伝いをさせてもらっても、意識なく言われるままに動くだけでは、結局測量ポールを持つという経験にしかなりません。測量のポールマンのプロになりたいわけでは無いはずです。
本来は補助者として、受託から納品、経営の一端など、様々なことを経験させてもらって一人前になっていくのに、それらを端折っていることを考えたら、もっと頭を使わなければなりません。
ポールを持つ間にも、「先輩はどの点を測量するつもりなのだろうか」「その点の測量データが必要なのは何の為だろうか」「この測量にはどんな登記手続が絡んでいるのだろうか」「その手続に法的な論点があるとすればなんだろうか」等々、疑問点や問題点を具体的にあげていき、今手伝いをしているこの業務の全貌を想像するなど、いくらでも考えられるでしょう。
もちろん、現場では先輩の手を止めるような質問をしては邪魔になるだけです。
できるだけ頑張って現場を早く終わるように動く努力をし、先輩の時間を作ってから質問をすべきです。
現場によっては、公図や登記記録などを見せてもらえるかもしれません。
場合によっては、論点や問題点を教えてくれるかもしれません。
また、先輩がお客様や隣地の所有者の方々とお話や説明をしている場面があったなら、それこそが一番大事な学びの場のはずです。先輩の邪魔せずに「自分ならどう説明するか」を考えながら先輩の話を聴くことが、補助者の経験の少ない方にはとても重要です。
このような意識も持たずに帰るだけなら、勉強にはならず、単なるアルバイトで終わってしまいます。
独立開業とは、何でも自分から取りに行くということです。
頑張ってください。
応援します。