2012年12月29日土曜日

東電の損害賠償と未登記建物

世間は仕事納めをしています。
実家に帰る人々の動きも見られるようです。

日本経済の先行きに少し希望が見えたのか、今年は海外旅行をする人の数が少し増えているようで、喜ばしいことでしょう。

ただし、東日本大震災により、いまだに肉親が行方不明の方もいることも、今も仮設住宅で暮らす人達の生活は何も変わっていないことも、もうひとつの日本の現状です。

全国の皆さんに、いつも被災地のことを考えておいて欲しいとまでは言いません。
被災地の人間も積極的に気分転換をしていますし。
でも何かの切っ掛けで思い出して欲しいと思っているだけです。

被災地の直接的なニュースは少なくなってきましたが、震災関連のニュースは意識していると結構あるものです。

先日の震災報告会でも福島会の土地家屋調査士から発表させて戴きましたが、あの放射線被害の地区の未登記建物の登記依頼が来ているそうです。
そして、あの展示した防護服を着て建物調査に入っているそうです。福島の土地家屋調査士個人としても複雑だと思います。

建物は新築や増築をしたら、その所有者には一ヶ月以内に登記する義務が課せられています。
建物の新築、増築、取り毀し等の工事をしたら、登記す事べきであることは土地家屋調査士として当然に主張すべきと思います。私もこれからも機会ある度に訴えていくべきだと考えています。

ただし、それとこれとは違います。損害賠償ですから。

これについては、被災地の人間は自治体も含めて断固抗議をしています。
未登記であろうと、固定資産税の課税台帳で建物とその所有者が特定できるのなら、損害賠償は速やかにすべきであると主張しています。
しかし、現行では様々な問題があり、情勢の見通しは芳しくないようです。以下に報道された新聞記事三回分を転載致します。

問題は、政府や東電がこの問題をどう捉えているか、どう解決しようとしているか、そこに腹が据わっているかだけの問題だと私は考えています。

そもそも「ダンプカーで民家に激突していながら、あなたの建物は未登記だから損害賠償しません」という言い方を、加害者が言える世の中が間違っているのです。


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以下福島民報の2012/08/14の記事です
リンクが切れないように念のため全文を転載させてください


【東電賠償 建物修復費先行払い】未登記の住民、困惑 支払いの対象外 避難区域 11市町村問い合わせ続々


 東京電力の財物賠償基準に盛り込まれた建物修復費の先行払いをめぐり、不動産が未登記だったり、名義を変更していなかったりする住民の間に困惑が広がっている。東電は登記された建物の面積に応じて修復費を先払いするが、未登記や名義が違う場合は対象外としているためだ。新たに登記する場合は費用や時間がかかるなど住民の負担が増す。対象となる避難区域11市町村には問い合わせが相次いでおり、東電に対して柔軟な対応を求める声が上がる。
■反発
 「どうにも納得がいかない」。県内の仮設住宅に避難している50代の会社員男性は戸惑う。
 男性の自宅は40年ほど前に祖父が建てたが、不動産登記はしていない。東電に問い合わせたところ「登記をしてほしい」と求められたという。
 しかし、家の図面は既になく、登記するには土地家屋調査士に家の測量などを依頼しなくてはならない。名義変更もしておらず、建物を自分の所有にするには祖父の代までさかのぼって相続権利者の同意を得る必要がある。司法書士に相談したところ、10万円以上の費用がかかると言われたという。「地方では祖父の家を相続せずに使うことはよくある。被災者の負担が増すような仕組みはおかしい」と指摘する。
■相談500件超す
 市町村には問い合わせが相次いでいる。福島民報社の調べでは、浪江町の約200件を最多に田村、南相馬、川俣、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、葛尾、飯舘の各市町村で計500件を超える。「未登記だと支払われないのか」「祖父母の代から名義を変更していない」といった内容が多いという。
■釈明
 東電は、不動産登記を先払いの条件にした理由について「不動産登記が一般に公開されており、賠償額の算定などが迅速に行えるため」としている。
 担当者は「不動産登記を求めるのはあくまで先行払いするための対応。本賠償は固定資産税評価額などに基づき支払うことになる。1日も早く本賠償できるよう努力する」とも話す。市町村からは「納税証明での支払いにも対応してほしい」との要請も出ている。
■つかめぬ実態
 不動産登記には建物の面積や所有者などが記されている。ただ、不動産登記法では所有者が変わった場合も、名義を変更することは義務付けられていない。
 福島地方法務局によると、古い建物については登記自体がなされていないケースもある。このため、未登記だったり、名義が変更されていなかったりする建物がどの程度あるかの実態把握は不可能という。
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同様リンク切れが無いように全文転載させてください。


【土地・家屋の財物賠償】台帳閲覧 法の壁 支払い遅れ必至


 東京電力福島第一原発事故による土地・家屋の財物賠償で、算定の基となる固定資産税台帳の取り扱いに法の壁が立ちはだかり、支払いの遅れが必至となっている。資源エネルギー庁は、市町村から東電に台帳データを提供してもらう方針だが、閲覧には所有者の同意が必要になるためだ。対象は12市町村、最大約6万4000件に上るとみられ、市町村にとって膨大な事務作業が生じる。エネ庁は市町村の負担をできるだけ少なくしたい考えだが、具体策は見えない。
 エネ庁 東電にデータ提供を 市町村 所有者の同意が必要 
■個人情報
 「市町村に固定資産税台帳のデータを提供してもらうことは、最も早く財物賠償を行うための方法の1つ」。資源エネルギー庁の担当者は説明する。台帳には土地、建物の地目、面積、評価額、課税標準額などが記されている。6万件以上にも及ぶデータを東電がまとめて入手できれば、賠償基準の計算式に基づきコンピューターで一気に額を算定することができる。
 だが、市町村側は慎重だ。ある町関係者は「固定資産税台帳は、いわば『個人情報の固まり』。所有者の同意が必要で、早く手続きに入りたいのはやまやまだが、そう簡単には提供できない」とする。別の町の担当者も「賠償のためとはいえ、通常なら知り得ない個人情報を民間企業に渡していいのか。大量のデータが、外部に流出する可能性もゼロではない」と頭を悩ませる。
■業務膨大
 地方税法では、不動産の所有者から委任があれば、第三者の個人や企業が固定資産税台帳を閲覧したり、証明書を入手することが可能だ。しかし、委任状の発送や受け付け、さらには証明書の発行など、一連の手続きは誰が担うのか-。
 各市町村は、東日本大震災と原発事故以降、増大した業務の処理に追われている。ある町の担当者は「被災世帯だけで約400あり、不在地主も含めれば、業務量が膨大になるのは明らか。県外自治体から職員を派遣してもらっているのに、これ以上の余裕はない」と苦渋の表情だ。エネ庁は「市町村の負担増にならない方法を考えたい」とするが、具体的な対策を見いだせないのが現状だ。
■法整備
 市町村からは、賠償を迅速に進めるため、所有者の同意がなくてもデータを提供できるようにするなどの法整備を求める声もある。
 しかし、エネ庁は、法改正などを行う場合、「法整備自体に時間がかかり、支払いが遅れる。現行制度の中で最善の方法を探りたい」との考えを示す。一方、地方税法を所管する総務省は「法改正も含め、どのような方法で賠償していくのかは、まずエネ庁が検討すること」との姿勢だ。
【背景】
 東電が発表した土地、家屋などの不動産の賠償基準では、宅地は固定資産税評価額に係数(1.43)を掛けて算出する。建物は、事故前の固定資産税評価額と築年数に応じて算定する方法の他、平均新築単価による算定方法など3つの方法から選べる。財物賠償の請求受け付けは避難区域再編が条件となっている。このため、再編が進んでいない町村では、支払い時期がさらに遅れる可能性もある。
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同様リンク切れが無いように全文転載させてください。
【避難区域の家屋補修費賠償】請求書7000通届かず 東電、登記簿優先し発送

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域の家屋補修費の賠償で、東電が対象者に送付した請求書2万4000通のうち3分の1に当たる約7000通が宛先不明で届いていないことが25日、分かった。避難実態を十分に確認しないまま不動産登記簿を基に発送したことが原因。被災者が郵便物の転送サービスを利用していなかったり、登記簿上の所有者が死亡しているなどのケースが続出した。補修費の支払いを受けることができない事態も懸念されるが、同社は対応策を見いだせていない。
■不明
 東電は7月下旬から、11市町村の避難区域内にある建物の所有者約2万4000人に請求書の郵送を開始した。
 この際、精神的損害賠償の受け付け手続きで独自に把握した対象者の名前や避難先、元の住所などの情報と、登記簿の記載を比較。名前と住所が一致しない場合には、登記簿の所有者の住所に請求書を送った。法的に位置付けられた登記簿のデータを信頼し、優先して活用するべきと判断したためだ。
 ただ、早急な対応を求める声もあり、避難実態の把握が十分にできなかった。避難先までの転送サービスを郵便局に申し込んでいない対象者の請求書は宛先不明となり、先月末までに約7000通が東電に送り返された。登記簿上の所有者が死亡しているにもかかわらず、名義変更されていない場合についても宛先不明となったという。
 東電福島地域支援室は「多くの方に請求書が届いていないのは事実で、申し訳ない」としているが、「対応策は検討中」とするにとどまっている。
■不満
 浪江町や楢葉町などの自治体では、東電が請求書の送付を始めた時期に「知り合いには届いたが、うちには来ない」といった問い合わせが一日に数件程度あった。担当者は土地・家屋の財物賠償の支払いの際に合わせて請求できることなど制度内容を説明した。
 当初、請求書が届かず直接、東電に問い合わせたという大熊町の男性は「東電は準備不足だ。被災者自身に問い合わせの手間を掛けさせるのは納得いかない」と不満を漏らす。
■懸念
 来年1月以降に本格化する土地・家屋の財物賠償でも、請求書の届かない事態が多発すると想定される。
 財物賠償では市町村の多くが固定資産税課税明細書を所有者に送付する。所有者は明細書を添付した上で東電に請求書を送る方式を採る。しかし、先行して送付を始めた葛尾村では、これまでに郵送した約860通のうち、40通程度が宛先不明で戻ってきた。
 村は固定資産台帳に記載された個人が亡くなっているケースがあるためと分析している。村総務課の担当者は「(こうした事態を)放置できず追跡調査するが時間を要するだろう。人口の多い市や町は、さらに対応が大変ではないか」とみている。
 県原子力賠償支援課は「財物賠償は生活再建のために重要。請求書の届かないケースがあってはならない」として、東電にあらためて対応を求めていく。
【背景】
 避難区域の家屋補修費の賠償基準は東電が今年7月に発表した。一日も早い生活再建につなげるため、土地・家屋の賠償額のうち一部を先に支払う。家屋が避難区域にある被災者が対象で、賠償額は1平方メートル当たり1万4000円、最大1000万円まで。避難期間中に雨漏りなどで破損した家の内装、水道管などの交換・修理が対象。補修費として支払われた分は、土地・家屋の財物賠償額から差し引かれる。

2012年12月26日水曜日

百万倍になって帰って来い。

年末ですね。
年末ジャンボ宝くじの季節です。
宝くじが当たったら人生変わるんだろうなと思いながら、今回も買っていません。

さて、先日事務所のKさんに廻ってきた一万円札。
なんか下の端の方が汚れていると思い、よく見ると以下の落書きが有りました。





「百万倍になって帰って来い。」
お札に落書きすることは違法とまでは行かないけれど、本来慎むべきものです。
しかし、書いた文言があまりにも笑えるものでしたので、ナイショで紹介します。

よほど離れたくない最後の1万円札だったのか。
どうせ書くなら、お札が百万倍になって帰るときに分からなくなるから、連絡先と名前でも書いておけば良いのにね。

Kさんが言ってました。
「これ、私が使ったら、私が書いたと思われる・・・。」





2012年12月25日火曜日

待ち時間短縮診療受付サービス

先日引いた風邪が治っても、咳が少し残っているようです。
私には以前からたまに出る症状で、昔は咳喘息と診断され、今はアレルギーによるものではないかと診断されたりしています。

今まで、複数の内科や耳鼻咽喉科に通ったりしていました。セカンドオピニオンどころではなく様々な医者の話を聞きましたが、多角的に自分の身体を知ることができて、それなりに良かったと思っています。
問題の咳も直りつつあるので、やはりアレルギーだったのかも知れないと思い始めています。

さて、耳鼻咽喉科はどこでも混んでいるようです。
仙台市内のある耳鼻咽喉科では2時間強の時間を待合室で待たされました。待合室に座らずに、もし新幹線に座っていたら、90分で東京に着くのにね。
「毎週来い」と言われたので、「それは時間的に無理だ」と思い、別の耳鼻科に変えました。

そこも結局「2時間近く待つ」と言われたので、一時外出してスタバでコーヒーを飲んで来ました。
帰ってから聞いたのが「待ち時間短縮診療受付サービスというものが有るとのことでした。
ネットまたは電話で診療予約ができて、待っている人があと5人程度になったらメールもしくは希望の電話番号に連絡がもらえるとのこと。さっそく先日使ってみたところ、とても良かったのです。
とりあえずネットで予約し、時間まで仕事し、携帯電話に自動通話の連絡が来てから病院に行くと、あまり待たずに診察を受けることができました。このサービスは、システム費と通信費等でそれなりにコストがかかりそうでした。

どちらの医者も信用ができそうでした。
そうであれば、私は忙しいので、当然このサービスが使える後者の病院に通います。

先生と呼ばれる職業でも、お客様目線で投資していますね。
こんな努力を「他の先生と呼ばれる職業の人」に見せてやりたいと思いました。

結局、私の咳は、「何に対するアレルギーによるものなのか」という問題ですが、家に帰ると治るので、おそらく「調査士アレルギーではないか」と睨んでいます。




2012年12月23日日曜日

COACH 万年筆

書籍に付録が解禁になってから久しいですね。
MonoMaxという790円の雑誌の一月号の付録は、あのCOACHブランドの万年筆でした。

特別COHCH好きでもないけれど、万年筆好きな私としては、見た事の無い万年筆が入手できるので、見逃す事はできませんでした。使えなくてもネタにはなるでしょうし。
ただ、コーチはブランドイメージのためにこのペン出して良かったの?って思うのですが。



デザインが良いんですよね。キャップには「COACH」の文字も刻まれて、ボディはシグネチャーで巻かれ、結構良いですね。まさか790円の雑誌の付録とは誰も思わないでしょう。
ちなみにコーチはシグネチャーを発表する前の製品の方が良かったと個人的に思いますが。



クリップの造形は、とても使いやすいです。天冠まで開く造形なので、厚地のポケットにも生地を傷めずに挿せます。


ペン先はさすがに鉄ペンです。でも首軸がシルバーのメタルなので、むしろ金ペンよりこの方が綺麗という納得のデザインです。


まあ、ペン先とペン芯の中心が少しずれていたところはご愛嬌でしょうか。




ニブポイントは中字程度の太さです。太い文字も細い文字もニブポイントの精度が目立つので、確かにこのあたりの太さが無難です。書いてみたけれど、特別書き味が悪いというほどではありません。個体差がありそうですが、使えると思います。



以前ラピタという雑誌でも万年筆がたまに付録に付いて、すべて買った覚えがあります。
あらためて引っ張り出しましたが(右2本)、それらに比べればとても良いデザインと思います。これ790円で十分元はとれます。
ちなみに今Amazonでは売り切れです。書店では在庫の有るところもあるようですが。

最近雑誌のオマケは流行していますし、以前より充実しています。
おそらく電子書籍との差別化などもあるのでしょう。
ただこの傾向は編集者としてとても悲しいと思うのです。「自分は何を売ろうと思って編集者をやっているのだろうか」というジレンマに陥らないでしょうか。
少なくても今回の私は、書籍の記事はどうでも良くてペンが欲しかっただけですし。
いやいや批判じゃないですよ。そんな雑誌も有りですよ。

あっ、そうか。
ガイダンス土地家屋調査士報酬」も、付録で万年筆でも付ければもう少し売れたかも・・・。







2012年12月21日金曜日

震災報告会~総括

今回の「東日本大震災報告会~被災地からの発信」について、今週はいろいろ書かせて戴きました。最後にちょっとだけ書かせてください。

報道が減った今だからこそ、全国から集まってくださった土地家屋調査士の皆さんにとっても、冷静に現場の視察もできたでしょう。
1年9ヶ月経った今の被災地の現実を是非見て欲しかったのです。

さて、この報告会についての私の考え方をお伝え致します。

今回は地元の人間が、自分の言葉で、決して飾らず、地震や津波に恨み言も言わず、原発に関しても政治的なメッセージも込めず、事実を淡々とお伝えすることを考えました。

何かをお感じになり、何かを考えて、何かを行動に起こすのは皆さんにお願いしようと思いました。

ですから、支援を続けて欲しいというお願いが、報告会のメインの趣旨ではありません。
全国の仲間にこの経験を自分のものとして、生かして欲しいという願いを込めたつもりです。
それが今の私たちにできる一番のことだと思っているからです。

そして東北も早急に力を付けます。

全国に何かことが起きたときには駆けつけるつもりです。
その緊急時にお役に立つノウハウを一番持っているはずですから。



2012年12月20日木曜日

震災報告会~イマジネーションを

先日の震災報告会の第二部の内容を、4~5時間の研修会で説明をして欲しいというお話しがありました。
できれば恒久的な研修科目として、日調連のe-ラーニングに入れて欲しいとの要望もありました。

先日の報告会の第二部とは「土地家屋調査士と震災業務」と題して、土地家屋調査士が取り組む震災復興業務を説明いたしました。具体的に岩手と宮城の取り組んでいる建物や土地についての業務を説明しました。
これらの発注業務について、万が一、ご自分の地域で災害が起こったときのために、今回の発注仕様に沿って勉強しておきたいといのです。

確かに説明の時間が足りなかったですね。
仕様については土地家屋調査士会を通じてお問い合わせ戴ければ、組織としてお返事致しますし、講師が必要ならお伺いしてご説明も致しますが、それと問題は全く違うと思います。
一番ここを理解して欲しかったのですし、現場のバスツアーで、そこも見て欲しかったのですが。

被災地は、各々その被災状況が違います。
被災内容も規模も原因も種類も違います。
もちろん、そのときの政府の方針と行政担当者によっても内容が異なります。

ですから全国で何か問題が起こったら、今回の仕様のまま業務が発注されるのではないはずです。実際に阪神・淡路大震災のときの災害復興業務と今回の業務は全く違いました。
建物滅失調査業務は確かに同じ業務ですが、今回は津波起因が入ったために、業務の規模と方法が異なりました。併せて、あれから17年コンピュータ技術も変わったので、前回のやり方はそのまま参考にはなりませんでした。

そんなところを皆さんに考えて欲しいのです。
土地家屋調査士の皆さんは、地域密着で地元の土地を一番知っているはずです。
どこにどんな災害が起こりそうかイマジネーションを働かせれば、答えが出てくるはずです。
たとえば富士山や桜島などの噴火を伴えば、どんな災害が想定されるのか。
そのときに皆さんの地元の土地や建物はどんな被害を被るのか。そのときに地図や登記はどうなると思うのか。
そのときに自分たち専門家ができることは何があるのか。

発注を待つのでは無く、今から提案して欲しいのです。
そうすれば、仕様書も自分たちで提案できます。
そんなことを考えて戴きたいのです。

不吉なことを書いて申し訳ありません。
でも専門家は、不吉なことを不吉と思わずに、科学的に考えて可能性をイメージしなければなりません。

今回の業務をご説明することが必要なら、何回でもやりましょう。
ただし、それを聴いていれば問題ないと思っているなら、それこそ問題です。
日調連のe-ラーニングは、土地家屋調査士全体の研修体系の中で構築すべきものです。
今回の震災ネタを、その体系に無理に入れるなら、地籍学の中で地殻変動と地図の考え方などを入れるべきでしょう。
少なくても、今回発注の業務仕様の研修を4~5時間位置づけるのはナンセンスと思うのです。

土地家屋調査士の皆さんには、専門家としてもっとイマジネーションを働かせて、今のうちにできる防災をやって欲しいと願っています。

それが被災地の願いです。



2012年12月19日水曜日

震災報告会~被災地視察バスツアー

先週の震災報告会の企画で一番の目玉はバスツアーでした。

私たちの言葉でお伝えした被災地の現状を、皆さん専門家の眼で実際に見て欲しかったのです。
映像を何回見ても映画と同じですから、現地体験しないと分からないことがあります。
ご自分で土地に実際に降り立たないと、実感が分からないはずです。

そこで以下のバスツアーを企画したのですが、全国から参加なされた大勢の土地家屋調査士の方々がツアーにも参加されて、とても嬉しく思いました。

14日
折立蒲生方面半日コース

16日
A 閖上山本方面半日コース
B 石巻女川方面一日コース
C 気仙沼、陸前高田方面一日コース

以上企画しましたが、全部で250名を超える参加者がありました。
この他にも独自でバスをチャーターして動いてくださったグループも数台有り、土地家屋調査士の意欲を感じました。

私は添乗員として、Bコースのバスに乗りました。
石巻女川方面は何度も行ったところです。
しかし、いつも何か目的地を目指して通っていたので、全体視察という眼では見ていなかったことに気が付きました。
私にとってもツアーは新鮮な部分がありました。


女川です。被災した建物がそのまま残っています。
以前この周りは建物が建ち並んでいました。




石巻の門脇小学校です。創立明治6年の由緒ある学校です。
皆で視察しました。
大津波に襲われ、更に火災に襲われたところです。
ほとんどの児童は無事だったようです。




焼けただれた校舎です。




校舎には「門小ガッツ、僕らは負けない」という横断幕が貼ってありました。

そうです。
僕らは負けないのです。




2012年12月18日火曜日

訃報-菅原春彦会員のご尊父様ご逝去


仙台支部 菅原春彦会員のご尊父様が12月16日にご逝去なさいました。
葬儀等の日程は以下のとおりです。
ご冥福をお祈り申し上げます。


<通 夜>
日時 平成24年12月18日(火)午後7時~
場所 「米永諸江館」
    金沢市諸江町 39-15
    電話  (076)233-1930(代)

<葬 儀>
日時 平成24年12月19日(水)午前11時~
場所 「米永諸江館」
    金沢市諸江町 39-15
    電話  (076)233-1930(代)

<喪  主>
 北村哲郎様(菅原春彦会員の兄)

震災報告会〜発表

15日に「東日本大震災報告会〜被災地からの発信」を開催しました。

今回は、参加者は土地家屋調査士のみという報告会にしました。一般の方や役所の方もお招きする事も考えられましたが、僅か半日でたくさんのものをお伝えするには「そもそも筆界とは」とか「阪神淡路大震災の際の法務省の通知」などから説明する時間を省きたかったからなのです。

報告会は3部構成でした。

第一部は「被災体験を聞く」と題して、会員の個人的な被災体験を伝えてもらいました。
宮城、岩手の被災体験は、とても大変な体験でした。しかし、それにも増して福島は、現在進行形の被災中です。復旧する入り口にも立ってないのです。とてもとてもお気の毒な状況だと再認識できました。なお福島の被災の現実については、写真をパネルにして会場で展示しました。ご覧くださったでしょうか。またその脇で放射能防護服も展示しました。何か感じていただければ幸いです。

第二部は「土地家屋調査士と震災業務」と題して、土地家屋調査士が取り組む震災復興業務を説明いたしました。岩手と宮城の取り組んでいる建物や土地についての業務を説明しました。時間が無くてかなり駆け足でしたので、また別に説明の機会を持ちたいと思います。

第三部は「東日本大震災と土地家屋調査士」と題して、早稲田大学大学院法務研究科の山野目章夫教授にご講演をお願いいたしました。
第一部と第二部の発表を受けて、それらにコメントしながら法的に整理されていくところが、さすがに山野目先生と感心させられました。



この写真は、第一部で宮城会の高野広報部長が、被災体験を話しているところです。
高野部長の自宅が大津波に遭ったところをスライドで紹介していました。
3月の大震災でにこんな目に遭っているのに、高野さんは震災後の5月から宮城会の広報部長になってくれました。会長としてとても感謝しています。





2012年12月17日月曜日

震災報告会〜実行委員長の挨拶

先週14日〜16日に「東日本大震災報告会〜被災地からの発信」を福島、岩手、宮城の土地家屋調査士会の合同で開催いたしました。
北海道から沖縄まで本当に全国からたくさんの仲間が集まってくださいました。
動員もかけずに400人強の個人参加者が集まってくださるなんてとても凄い事です。感激しました。
何時間、何百人の前で研修会講師をしても、あがった事の無い私が、最初の実行委員長の挨拶をする際に、感激で動揺してしまいました。
動揺した事は完全にバレていて、懇親会で皆さんからイジられましたね。
実は、こんな趣旨の挨拶をしたつもりです。


本日は全国からこんなに大勢の土地家屋調査士の皆様にお集まり戴き、とても感謝しておりますとともに、福島、岩手、宮城を代表する実行委員長としてとても感激しております。

昨年の3月11日は、ー生忘れられない日になりました。あの東日本大震災という自然による想像もつかない程の暴力と、それに対する人間の無力感と、そしてその直後に始まる全国の連帯と心の籠ったご支援と、それらすべてが忘れられないものになりました。
当時食べ物も水も電気もガスも無く、暗闇の不安な中、私たち被災地の人間は、全国の皆様による物心両面のご支援にとても勇気を戴きました。

お陰様でとても歩みは遅いのですが、それでも岩手、宮城は復興の道を歩み始めています。しかしご存知のとおり福島は、その復興のプロセスに入る事さえ許されない状況でもあります。これが被災地東北の現状でもあります。

今回の報告会は、全国の土地家屋調査士の皆様から戴いた多くのご支援に対するお礼の一つのつもりで企画しました。首都直下型地震など近い将来懸念される問題も提起されている中、被災地で起きること、被災者ができること、被災地でなければできないこと、それを専門家の皆さんにお伝えする事が今回の報告会の趣旨です。

また本日の報告会だけでなく、その前後の被災地バスツアーなどで、実際の被災地の不動産を見ていただきたいと思っています。
被災地で土地や建物がどうなるのか。そのときに地図や登記がどうなると思うか。その土地で暮らす人々の生活にどんな問題が生じるのか。
そしてその状況で、専門家として何ができるのか。
すべて失った海岸付近の住宅地はとても気の毒です。でも構造物が残ったまま地表面が不等移動した陸地の方が、地籍学的問題が大きい事は土地家屋調査士の皆様ならお分かりのことと存じます。

そんな部分を専門家の眼で見て、感じて、考えて欲しいと願っています。
この被災地を専門家として、全国の専門家を案内する事が、今できる皆さんへの一番の恩返しだと信じています。
あまりストイックに考えなくても結構です。気軽なご参加で結構です。
この3日間のイベントを通して、日本国民として何かを、そして日本の専門家として何かを、感じていただけたら幸いです。

では、本日の報告会を始めさせて戴きます。
運営等至らないことも多いと思いますが、精一杯準備しましたので、最後までよろしくお願い申し上げます。



2012年12月12日水曜日

震災報告会にご参加戴く皆様へ 服装の件

先日も今週末の震災報告会「被災地からの発信」に参加くださる皆様に、このブログでもメッセージを書きました。下記に再度転載しておきます。

私たちも皆様をお迎えすることを楽しみにして、準備を続けています。
全国からたくさんの皆さんに参加して戴くことはとても嬉しいのですが、私たちも、それだけ多くのお客様をお迎えすることに馴れていませんので、ご不自由をお掛けすることもあるかと思いますが、精一杯の準備をしていることでご勘弁ください。

さて、「報告会に何を着ていけば良いか」というお問い合わせがあります。
大変答えにくい質問です。

つい先日宮崎にお伺いした時に、宮崎の方々は「とても寒い」とおっしゃって「普段コートを持っていないので、お父さんのコートを借りてきた。」と言う方がいたのですが、私はそれほど寒く感じず、むしろ着て行ったコートをホテルに置いて動いていたくらいだったのです。
寒さに対する慣れの問題もあるかも知れないし、私の程良く身に付けた体脂肪のお陰かも知れませんが。
この部分は、感じ方人それぞれですから、むしろ週間天気予報を見てご判断ください。

おそらく寒いと覚悟しても、実は長い時間ではありません。

報告会会場や懇親会会場は屋内ですし、バスツアーも被災地で歩きますが、おそらくほとんどの時間はバス内の移動でしょう。
ですから、スキー場に行くような覚悟は不要です。

むしろ着たり脱いだりしやすい服装をお考えください。

ちなみに本日の私の服装は、上下普通のスーツに普通のコート、普通の革靴で歩いていました。
朝と夜は、手袋、マフラーも使いましたが、これも人によるでしょうね。
本日18時の仙台の気温は摂氏6度程度でした。

鹿児島発の防寒ジャンパーでもあれば、もう寒さ対策は充分でしょう。

もちろん、普段コートを持っていないという九州の方々。この東北遠征を言い訳に、コートを買う(買ってもらう)ことは、良いことだと思います。



以下12月9日のブログ

全国からご参加くださる土地家屋調査士の皆さん

報告会だけでなく、前後の被災地バスツアーなどで、実際の被災地の不動産を見ていただきたいと思っています。
被災地で土地や建物がどうなるのか。そのときに地図や登記がどうなると思うか。その土地で暮らす人々の生活にどんな問題が生じるのか。
そして専門家として何ができるのか。
専門家の眼で見て、感じて、考えて欲しいと願っています。
この被災地を専門家として同じ専門家を案内する事が、今できる皆さんへの一番の恩返しだと信じています。
あまりストイックに考えなくても結構です。気軽なご参加で結構です。
日本国民として何かを、そして日本の専門家として何かを、感じていただけるものと思います。

ここ一週間で東北は寒くなりました。雪の少ない仙台でも今日は降っています。
全国から集まる皆さんには雪に慣れていない地方からのご参加もあるでしょうが、お気をつけてご参加ください。

現在のところ14日〜16日の宮城県の週間天気予報では、最高気温9〜10度。最低気温1〜3度。降水確率20〜40%とのことです。
ご参加くださる皆さんは、各自天気予報をチェックして、ご参加くださるようお願い致します。


追記)
遠方からご参加くださる方は、期日前投票もお忘れなく。

2012年12月10日月曜日

あゆみブックス仙台一番町店が復活

昨年の3月11日に起きた東日本大震災の被害は、とてもとても甚大なものでした。
それは日本中の誰でも知っていることだと思います。

では今被災地はどうなっているのか、この点については日本中の大半の皆さんが誤解なさっていると思います。
「震災報道が無くなってきたから、もう被災地はとっくに復興しているだろう。」と皆さん思っているようです。

違います。

このブログで何度も書いているように、ニュースは昨日と違うからニュースになるのです。
現地は何も変わっていませんから、ニュースにならないのです。

今年の夏、いくつかのブログで紹介しましたが、それ以降も何も変わっていません。

「そうは言っても仙台だけは完全復興ですよね。」という人は多いでしょう。
そうですね。確かに大半は復興していますよ。

でもね、すべてがそうでもないのですよ。

私の事務所はマンションを借りているのですが、その一室は今だに使えません。
まだまだいろいろ有るのです。


仙台市の一番町をご存じですか。
仙台を代表する商店街のひとつです。
その一番町の商店でさえ、震災後20ヶ月ぶりに、やっと復活した店もあるのです。
あゆみブックス仙台一番町店です。


大型書店で書籍の種類があり、25時までという、ひととおり廻るのに3時間はかかる私のためにあるような書店です。
大変な被害があって、復旧工事と耐震補強工事がやっと終わったようです。
11月16日に再オープンしました。
また定期的に、私の趣味である大型書店探検に行きたいと思います。

今週末、仙台で開催される「震災報告会~被災地からの発信」にいらっしゃる方々は、被災地では何が復興できて、何が復興できていないのか、それは何故なのか、是非ご自分の眼で見て、お考えください。

日本国民として、または専門家として、先進国と言われる日本で被災した場合に、政府や行政に何ができるのかを。
それが皆さんの土地に万が一の災害が起きたときの指針になります。




過去の自分のブログの引用ばかりで恐縮ですが、よろしければ今年の終戦の日に書いたブログ「終戦の日に日本の復元力を考える」も読んでみてください。




2012年12月9日日曜日

東日本大震災報告会「被災地からの発信」は今週末

このブログでも何回かお知らせしていた東日本大震災報告会「被災地からの発信」は、今週末になりました。

対象者を土地家屋調査士限定としたのですが、それでもお陰様で全国から参加申し込みを戴いた数が380名程になりました。たくさんのご参加ありがとうございました。
参加くださる皆様には、報告会や宿泊、懇親会やバスツアー等のご案内が届いた頃と思います。ご連絡が遅くなりましたが、プロの旅行会社とは違い慣れてない中、担当者や事務局職員が残業しながら頑張ってまとめた成果です。不手際があればご勘弁ください。

福島会、岩手会、宮城会会員の皆さん

今回の報告会は、昨年の3. 11東日本大震災の際に全国から戴いた多くのご支援に対するお礼の一つです。被災者ができること、被災地でなければできないこと、それが今回の報告会のつもりです。
全国の仲間が来てくださいます。
精一杯歓迎したいと思っていますので、ご協力をよろしくお願いいたします。

全国からご参加くださる土地家屋調査士の皆さん

報告会だけでなく、前後の被災地バスツアーなどで、実際の被災地の不動産を見ていただきたいと思っています。
被災地で土地や建物がどうなるのか。そのときに地図や登記がどうなると思うか。その土地で暮らす人々の生活にどんな問題が生じるのか。
そして専門家として何ができるのか。
専門家の眼で見て、感じて、考えて欲しいと願っています。
この被災地を専門家として同じ専門家を案内する事が、今できる皆さんへの一番の恩返しだと信じています。
あまりストイックに考えなくても結構です。気軽なご参加で結構です。
日本国民として何かを、そして日本の専門家として何かを、感じていただけるものと思います。

ここ一週間で東北は寒くなりました。雪の少ない仙台でも今日は降っています。
全国から集まる皆さんには雪に慣れていない地方からのご参加もあるでしょうが、お気をつけてご参加ください。

現在のところ14日〜16日の宮城県の週間天気予報では、最高気温9〜10度。最低気温1〜3度。降水確率20〜40%とのことです。
ご参加くださる皆さんは、各自天気予報をチェックして、ご参加くださるようお願い致します。


追記)
遠方からご参加くださる方は、期日前投票もお忘れなく。




2012年12月6日木曜日

訃報-古積威相談役のご尊父様ご逝去


本会相談役(仙台支部) 古積 威 会員のご尊父様が12月4日にご逝去されました。
葬儀等は以下のとおりです。
ご冥福をお祈り申し上げます。

<通 夜>
日 時 平成24年12月8日(土)午後5時~
場 所「メモリアルホールあさの」
    名取市増田字柳田375
    電話 022-382-2831

<葬 儀>
日 時 平成24年12月9日(日)午後1時~
場 所「メモリアルホールあさの」
    名取市増田字柳田375
    電話 022-382-2831

<喪  主>
 五嶋弘之様(古積威 会員のお兄様)

2012年12月5日水曜日

研修会の構成と落語の構成

昨日12月4日は宮崎県土地家屋調査士会の研修会と(社)公共嘱託登記土地家屋調査士協会の研修会の講師をするというダブルヘッダーがありました。
調査士会の研修は土地家屋調査士を対象に「土地家屋調査士の事務所経営と業務報酬」を、公嘱協会の研修は土地家屋調査士と行政担当者を対象に「東日本大震災からの報告〜被災する前にできること」をお話ししました。

私にとっては初宮崎でした。初めての会に伺うときには、とても気を使います。
事前にその地域の業務、気質、過去の研修会の雰囲気を把握しないと、研修に実感が伝わらない事があります。特に午前中は業務報酬に関する話ですから、宮崎の調査士の事務所の形態や、一般的な不動産の規模、不動産の価格、業務の方法、業務報酬などを把握しないと、講師として上滑りする事があります。
「お前の言う事はわかるが、それは仙台の話だろ・・・」などの感想を与えたら、何の意味も無いからです。

以前も書きましたが、私は子供の頃から寄席番組を見て古典落語で育ちました。
研修会では、あの落語の構成がとても参考になっています。
最初に「つかみ」があり、「まくら」があります。そのあとで「本筋」に入り、最後に「さげ」で終わります。

研修会でも最初に何らかの「つかみ」が必要です。
聴衆に興味を持ってもらわなければなりません。
聴衆は最初の数分でこの講師の話を聞くべきか、寝ても良いか決めます。
その後どんなに良い話をしようとも、聴衆が寝てしまうと何も伝わりません。
品の良い範囲で、自分に興味を持ってもらう。初めての地域では特に必要です。

次に「まくら」です。
本筋と関連する話をしながら、場を和ませ、自分の世界に持っていく馴らしをしながら、無理なく本筋に入ります。このときに「羽織」を脱いで、「今から本筋だよ」と聴衆に理解させる場合もあります。昨日はやりませんでしたが、私も上着を脱がせてもらう事があります。落語家ではこの「まくら」を話ながら、聴衆の雰囲気を見て、その場で「本筋」を選ぶこともあるようです。まあ私は講師ですから研修の本筋を変えることはできませんが、表現や使うスライドを変える事はよく有ります。
この場面で少しずつ話しながら、聴衆の表情を見ています。長年講師をしていますので、この場面で表情を見ていると、だいたい業務に対する考え方が把握できてきます。
研修会の構成の中でこの部分がとても重要だと思っています。

本筋を話し終わってからの「さげ」。これも研修でも大事だと思っています。
研修の「さげ」は、なにもウケを狙う訳では有りません。最後の余韻が残る様な話やスライドで終わる事を意識します。それが少しでも研修効果が残る秘訣だと思うのです。

研修会は講師の知識を披露する場面ではありません。時間をとって参加した聴講者のお役に立つように努力すべき場面だと思っています。
聴講者に媚びるのではありません。
どうすれば、頭に定着できるのか工夫すべきだと思っています。

そんなときに落語の構成はとても良くできていると思います。
たまに古典落語を聴いてみませんか。

追記)
もちろん、本筋をどこまで考えて、練り込んできたか、どれだけ稽古を重ねたかは当たり前の話です。